人探し63
それからも、ああだこうだと意見を述べては適当に検討してというのを繰り返すと、昼過ぎに道の終わりが見えてくる。
ヒヅキはそれを後続の三人に伝えると、気を抜かないようにしながら先へと進む。
崖に僅かに張り出しただけのその道を進み終えると、すれ違うのも難しそうな狭い山間の道に出る。しかし、今まで身体を横にしなければ進めないような道を進んでいたので、そんな狭い山間の道でも広く感じた。
道に出た後、ヒヅキはまず休める場所はないかと周囲を調べる。その間にフォルトゥナまでその道に出たが、狭い道ではその場に座って休むぐらいしか出来ないようだ。
道は凸凹とはしていても、座って休めないほど凹凸が激しい訳ではないので、道に出た四人は縦に並んで道に腰を下ろす。
軽く食事をしながら少し休むと、日が暮れる前にもう少しゆっくり休める場所を探して移動を開始する。
移動するといっても崖自体はまだ続いていて、現状は崖に挟まれる形で偶然できた隘路を進んでいるに過ぎない。休める場所を探すにも、まずは広い場所に出なければならなかった。
暫くその隘路を進むと、日が暮れてしまう。しかし隘路になっている部分は長いようで、ヒヅキ達は日が暮れても隘路から脱する事が出来ずにいた。
とりあえず、ヒヅキ・エイン・プリス・フォルトゥナの順で縦に並びながら二人ずつが向かい合うように座り、ヒヅキとエインが持ってきていた角灯に火を灯して、それぞれの間に置く。
そのまま夕食を済ませて話し合いを行う。しかし縦に並んでいて話し合いがしにくいので、隘路を早く抜ける事を目的にするだけで話し合いは終わった。
エインとプリスは毛布を出して寝る姿勢に入る。
縦に長いので、ヒヅキとフォルトゥナが少し下がれば場所の確保は容易だし、地面も凸凹はしているが、尖っていたり凹凸もそれほどではないので、硬さを無視すれば多少寝にくいだけ。
エイン達は地面に持ってきていた寝袋を敷いた後、寝袋の中に服などを入れて少しは寝やすいように調整する。頭の下には背嚢を置いていた。
そんな二人を挟む形でヒヅキとフォルトゥナは座る。二人は遠話が使えるので、会話するのに距離はあまり関係ない。
とはいえ、夜は周辺警戒するだけなので、普段から会話らしい会話は無い。あってもスキアの情報ぐらいだ。
「………………」
ヒヅキは魔力視の制御がてら周囲に眼を向ける。すると、上空に羽を生やした何かが飛んでいく様子が下から視えた。丁度真上を通る進路のようだが、ほとんど一直線に進んでいるので、その幻影は青白い線の様にしか視えない。
その先まで眼を向けてみるが、それは山の向こうに消えていった。先に進めば続きが確認出来るだろう。
(そもそも、あの何者かは何処から現れたのだろうか?)
ヒヅキは内心で飛行する幻影に気がついた時の事を思い浮かべる。
それは崖に張り付くようにしながら進んでいた時の話。先を進む幻影を追いながらも、周囲には何も無い一本道で崖から張り出した細い道を進んでいたという事もあり、ヒヅキは魔力を節約する為に過去視を常時起動していた訳ではなかった。
過去視は魔力消費量が大きいので、そうしなければ魔力水を飲んで魔力を回復しなければならず、その為には崖に張り付くようにして進んでいる状況で腰から水筒を取って、水筒のふたを開けて中の魔力水を飲まなければならない。それはいくらヒヅキといえども危険な行為。躊躇った訳ではないが、厭った事は確かだ。わざわざ進んで危険を冒す必要は何処にもないのだから。
その為、ヒヅキがそれに気がついた時には、既にそこに居たのだ。振り返って前を確認してみたが、幻影が現れた瞬間は崖の向こうに消えていた。
(空を飛んでいるのだから、何処に居ようとも不思議ではないが)
そう思いつつ、上空の幻影を見詰める。地上には目的の幻影の他に、ずっと付いてきている幻影が幾つか確認出来る。こちらも謎だが、ヒヅキ達が追っている対象を追っているのはほぼ確実だろう。目的までは不明だが。
それらを確認したヒヅキは、目を瞑って過去視の制御に集中し始めた。




