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人探し62

 暫く黙っていたフォルトゥナは、思案げな声音でヒヅキに言葉を掛ける。

『魔族、の可能性が在る何かが最近ここを通ったという事でしたら、魔族も国が危ういか亡くなっているかもしれませんね』

『しかし、ここまで単独で逃げてくるとは……どこかに援軍を要請するにも人間ではありえないし、他でも遠すぎる』

 ヒヅキは幻影をはっきりと視ることが出来ないので、幻影の負傷具合などは確認出来ないが、それでもしっかりと飛行している様に視えるので、大きな怪我はしていないだろう。

 負傷兵という訳ではないだろうから、仮に援軍要請だったとしたらその先は何処かと考えるも、そもそもこの辺りに魔族と交流がある国家というのは聞いた事がなかった。

『魔族がここに来ること自体が異常ですから。そうですね…………それだけ魔族の国周辺は悲惨な事になっているのかもしれません』

『まぁ、はっきり視える訳ではないから本当に魔族かどうかは分からないし、援軍要請とは限らないけれど』

『しかし、翼を持つ何者かは視えたのですよね?』

『ああ。見間違いや飛行魔法を偽装する為とかではなければの話だけれど』

『可能性が無い訳ではないですが、偽装はないと存じます。飛行魔法は珍しいですが偽装する意味がありません。そもそも使える者が限られているのですから、偽装の必要性が在りません。それに、仮にヒヅキ様の見間違いであったとしましても、それが飛行している事は変わらないのですよね?』

『ああ。何かに運んでもらっているようでもないし、崖上を移動しているのは事実だ』

 現在のヒヅキの過去視には物は映らないようだが、それでも飛行する道具というのは聞いた事がなかった。仮に存在していたとしても、完全に無人でなければ過去視が操縦士か空飛ぶ存在を捉える。

 しかし、可能性として考えれば、ヒヅキの過去視が捉える事が出来る有効範囲外にそれが在れば捉える事が出来ない。とはいえ、可能性など考えればあまりにも多岐に渡る。それに翼を持つ何者かが居たなど、ヒヅキ達にとっては入念に検討が必要ほどの事柄でもないので、そこまで深く考える必要はないだろう。

 そういう訳で、翼を持つ何者かが最近ここを飛んでいったという前提で話を進める事にした。

『でしたら、魔族か翼人かですが……魔族は少々本拠地が遠いですし、やはりここに来るような用事もない。来るにしても一人は考えにくい。翼人は少し先の谷間に小さな集落が在りますから可能性は在りますが、それでもここに単独で飛行する意味が考えつきませんね……』

 悩むようなフォルトゥナの言葉だが、そこに聞き捨てならない情報が混ざっていたので、ヒヅキは驚くようにフォルトゥナに問い掛ける。

『翼人の集落が近くに在るの?』

『はい。この山間部の先に一際高い山があるのですが、その頂上付近に集落があると聞き及んでおります』

『そう、なんだ』

 現在ヒヅキ達が通っている崖の道からは見えないが、ホーンの北側には更に高い山が聳えている。ただ、そのあまりの高さに、挑んだ者は居ても登頂した者は居ないと、ヒヅキが前に読んだ人間側の資料には書かれていた。

 ヒヅキも最近遠目に少し見た事があるだけで直接見た訳ではない。なので、実際の大きさはいまいち分かっていない。

『それはエルフの国で聞いたの?』

『はい。細々としたものではありますが、エルフは翼人とも交流が在ったようですので』

『へぇー。それは初めて知ったよ』

『かなり限定的な交流でしたようなので、知らなくて当然かと』

『どんな交流を?』

『住んでいる山に生えている薬草や周辺の情報と食料を取引していたと聞いていますが、私も実際にその現場を見たり、取引に関する資料を読んだ訳ではありませんので、確実な事は何とも』

『そっか。まぁ、それはいいか』

 今大事なのは、エルフが翼人と交流が在った事ではなく、過去視が捉えた翼を持つ何者かについてだ。もっとも、これも暇つぶしの一環ではあるが。

 それはフォルトゥナも理解しているからこそ、謎解き感覚で気楽に会話をしているのだろう。

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