人探し60
エイン達が起きた後、朝食や出立の準備を済ませて片付けまで終わらせると、ヒヅキ達は先へと進む。
進むにつれ通れる道が狭くなり、遂には崖に張り付くようにして進まなければならない場所に出る。身体を横にしなければ通れそうもないそこを、対象の幻影は進んでいる。
ヒヅキは少し考え、前で持っていた背嚢を引っ掛けるようにして何とか背負うと、エイン達にその道とも呼べない道を進む事を告げて進んでいく。
崖を抱きしめるようにして慎重に先へと進む。もしも足を踏み外せば、どれだけ下に落とされるのか。下を覗いてみるも、崖下の様子は暗くてよく分からない。
僅かに木々のようなモノが見えるも、それも遥か下。落ちたら無事では済まないのだけは確実だろう。その高さから落ちれば、流石のヒヅキでも無事では済まされない。フォルトゥナであればもしかしたら無事かもしれないが。
それでも先に行く幻影を視ながら進んでいくヒヅキ。確かに細い道ではあるが、道が崩落でもしない限りは慎重に進めば落ちる事はないだろう。今のところ、崖の間を吹く風もそれほど強くはない。
パラパラと崖下へと砂利が落ちていくも、ヒヅキは特に気にしない。むしろ後続の者が進みやすいように、道の上にある小石などを積極的に下に落としている。
そうして後続の事を気にしつつ進んでいくと、そろそろ夕方というところで幻影が崖の中に入っていく。
それを訝しげに視ながら進んでいくも、壁の中に入った幻影はその後出てきているので、道が中に続いている訳ではないのだろう。
それから少し進むと、答えに行き着く。どうやら崖の中ほどに横穴が開いていたようだ。
時間的にも丁度良いと、ヒヅキはその横穴の中に入る。しかし横穴の中は狭く、四人が座るのは無理そうだ。隙間なく詰めても三人が座るので精一杯だろう。
かといって一人外で待たせる訳にもいかないので、少し考えた後に1度外に出たヒヅキは、まずエイン達を中に入れて休ませる。
その後に自分が入って入り口傍に座ると、ヒヅキは膝上にフォルトゥナを座らせた。
ヒヅキの荷物はフォルトゥナに持たせる。それで何とか全員が中に入った。足も僅かに伸ばしきれない狭い場所ではあるが、座って休めるのは大きいだろう。
角灯は置く場所も吊り下げる場所もないので、今回はヒヅキが光球を出して横穴を照らす。
そうして明かりを確保した後、夕食を食べていく。
夕食を終えると話し合いを行うも、このまま崖を進むしか道は無いので、話し合う事もなかった。
今回は精神的な疲労もあったので、早々に休むことにする。エイン達は膝上に乗せている荷物から毛布を取り出すと、座ったままそれを掛けて眠りについた。
狭い場所で座り、膝上にはフォルトゥナを乗せているのでやれる事はほとんど無い。しかし過去視の制御は問題なく行えるので、警戒はフォルトゥナに任せ、ヒヅキは光球を消して過去視の制御に集中していく。
目を瞑り、まるで眠ったかのように静かになったヒヅキは、過去視の調整に取り掛かる。未だに使用魔力量が多いので、もう少し減らす必要が在るだろう。
先程からビュービューと風音が外から聞こえてくるが、横穴内には風がほとんど入ってこない。この辺りはフォルトゥナの魔法が影響しているようだ。
フォルトゥナも大人しくしているので、風音だけが横穴内に響いている。
それから時が経ち、夜が明ける少し前に過去視の制御を止めたヒヅキは、感知魔法で先の様子を確認する。
どうやらこのまま進めば、昼過ぎ辺りには道に出られそうだと思い、後は天気の様子だがと外に目を向けると、雲の動きは速いが雲量は大した事はない。昨夜から急に強く吹き始めた風が厄介そうだが、雨は降らないだろう。
縄でも使って身体を繋ぎ合わせていた方がいいだろうかと考えたヒヅキは、竜神の時を教訓にガーデンで長縄を購入していたのでそれを使うかと思うのだった。




