人探し49
そう考えた後、休むのに必要な範囲を決めて、早速作業に取り掛かる。
エイン達が離れたところで色々探している中、ヒヅキは天幕を張るのに必要な範囲の木片をどかしていく。
その動きを見たフォルトゥナがヒヅキに何をしているのか問い掛け、ヒヅキがそれに答える。それでフォルトゥナがヒヅキの手伝いを申し出て、手伝いを始めた。
フォルトゥナは魔法を用いて周囲の木を狭い範囲で吹き飛ばしていき、一応探索も行っていく。といってもめぼしい物は何も無いので、半ば探す振りのような感じではあるが。
そうして探索っぽい事をしながら片づけると、夕方前に片付く。
エイン達がまだ探索している中、ヒヅキとフォルトゥナは手際よく天幕を張る。
天幕を張り終えた辺りで、エイン達も探索を終えて合流した。
身体の汚れを簡単に落とすと、四人は天幕の隣に敷いた防水布の上に腰掛けて夕食を摂っていく。
保存食は大量に在るが、木の実はもう数個で在庫が無くなる。保存食があるので味の変化以外には役に立たないし、保存食が在る現状ではヒヅキとフォルトゥナしか食べないので必要はないが、大量に採集して長いこと食していただけに、食料を管理しているフォルトゥナの報告にヒヅキは僅かに寂しさを感じた。
しかし、その木の実は高地でも生っているので、もしかしたら探せば見つかるかもしれない。ならば別に気にするほどでもないかとその考えを直ぐに頭から追い出す。
夕食を済ませると、話し合いを行う。今回は集落跡の探索を行ったので、先程まで探索していたエインが報告を行う。
そのエインの報告によると、めぼしい物は無かったものの、ヒヅキが疑問に思った通りに生活に必要な物が不自然なまでに少なかったので、この集落は破棄された集落だろうという話であった。
「木の朽ち具合から考えるに、スキアが襲ってきた時より前に避難したと思う。だから、この集落が壊れているのとスキアは関係ない可能性が高いだろう」
「そうなんですか?」
「ああ。恥ずかしながら私の情報網では知り得なかったが、スキアに壊された訳ではないだろう」
エインの話に、ヒヅキは頷いた後に思案する。
「ただ、何故ここを棄てたのか、何処に向かったのかは不明だ。流石に情報が無くてはそこまではわからないな」
「そうですか」
「ああ。ただ、この集落が破棄されたのはスキアの襲撃よりは前だろうが、それでもそこまで昔という訳ではないと思うぞ」
「なるほど……まるでスキアの動きを察して動いたような感じですね」
「もしもそうであれば、是非ともその方法を知りたいがな。もっとも、知ったところでもう意味がないのだがね」
そう言って、エインが皮肉げに軽く肩を竦めたところで話し合いは終わった。
エイン達は桶にヒヅキから魔力水を貰ってから天幕に入っていく。
それを見届けた後、ヒヅキは目を瞑り過去視を制御するべく集中する。現在使用出来る過去視の時間範囲内には、集落に住んでいた者達は映らない。エインの予想ではスキアの襲撃前という話なので、それも当然ではあるが。
その代り、対象がこの場で何かをしている姿は確認出来た。しかし、何をしていたかまでは判らなかったので、諦めて制御に集中する。
もうすぐ何かが掴めそうな気配はあるが、まだ漠然としている。規模を縮小しているので、制御できているかどうかの結果は判りやすい。
そうして過去視の制御を行いつつ、時折フォルトゥナからスキアの報告を受けながら夜を明かしたヒヅキは、エイン達が起きだしてきたところで目を開ける。思ったよりも大分早かったが、やっと何かが掴めそうであった。
夜に期待しつつヒヅキは朝食の準備を行い、四人で朝食を摂る。片付けや準備などを済ませたら、幻影を追って先へと進んでいく。集落には何もなかったので、さっさと後にした。




