人探し47
周囲に生き残りは居ないと判断したヒヅキは、フォルトゥナに礼を言って話を終える。
(エインさんの話では、スキアは国境付近にも時折現れるという。であれば、たとえここら一帯に生き残りが居ないとしても、安全とは言い難いか。まぁ、その辺りは警戒していれば対処できるだろうが、引き続き光の剣をいつでも現出できるようにしておかなければならないな。これが結構負担なのだが、もう少し改良出来ないものか……)
話を終えた後にヒヅキは過去視の制御に集中しようとしたものの、その前に話の内容を思い出して警戒を強めると共に、もう少し過去視の制御に容量が欲しいなと、ほとんど常駐させている魔法の改善について思案していく。
(今日はこのままそちらに集中するとするか)
過去視を制御するにも容量は多い方がいいので、もう少し過去視を進展させる為に魔法を待機させるやり方の改善について考える。
魔法の待機状態とは、魔法が現出させる直前の状態にして保持する事で、その状態で抑えておくには少量の魔力と処理能力が必要になってくる。この辺りは慣れだが、それなりに高度な方法。
しかし、この待機状態にしておくと魔法の発動が早く、また手軽に行えるようになる。襲撃を警戒するのであれば、必要な方法だろう。必要な方法ではあるのだが、待機状態にしている光の剣は魔力消費量が多い魔法なので、それを抑えておく魔力量や処理能力は通常の魔法を待機状態にしておくのに比べて必然的に多くなる。
それでも今までのヒヅキであれば何の問題もなかったのだが、魔力の消費量が多く、それ以上に膨大な処理能力を必要とする過去視を修得して使いこなしたい現在のヒヅキでは、少しでも魔法を使う容量を増やしたかった。
待機状態にしている光の剣に意識を向け、それをどうにかしてもっと効率よく処理できないものかと見直していく。
光の剣とは、簡単に説明すれば光を収束させて剣の形に留める魔法だ。その工程はそれほど多くはないのだが、光を留め続けるのが難しく、その部分に多くの魔力を必要としている。
待機状態であれば、それはほとんど機能していないので大量の魔力が必要という訳ではないのだが、それでもいつで現出させる事が出来るように低出力で起動させ続けているのが待機状態であった。ただまぁ、低出力で起動しているとはいえ、光を収束させている訳でも、それを留めている訳でもないので、消費している魔力量は本当に軽微。
それでも普通の魔法よりは多いのだが、問題はそこではなく、魔法を待機状態で維持する為に必要な処理量。ただ、やはりこれも普通の魔法よりは多い程度。
いくら少しでも多く処理能力に余裕が欲しいとはいえ、ここに着手するのは意味があるのかと疑問に思えてくるほどだが、それでもヒヅキはそこの改善に取り掛かる。集中できる時間は短いが、問題はないだろう。
早速意識を沈めて集中していき、改良していく。そうして夜を明かした翌日。
外で寝たからか、いつもより少し早めに目を覚ましたエイン達。朝食もさっさと済ませて、片付けや準備を終わらせて先へと進む。
過去視で視ている対象は不安になる動きで山道を進んでいるが、概ね道に沿って進んでいる。
感知している周辺に脅威は何も無いが、徐々に道が険しくなっていっていて、移動速度が下がっていた。
ヒヅキとフォルトゥナにはそこまで影響はないが、多少訓練しているとはいえただの人であるエインとプリスでは、どうしても移動速度が鈍ってしまう。
様子を見ながらそれに合わせてヒヅキは進んでいるので、こればかりはしょうがない。最後尾のフォルトゥナが不機嫌そうにしているのも、いつも通りといえばいつも通りなので気にするほどではないだろう。ヒヅキはそう思う事にして、今後に少し不安を覚えるのだった。




