人探し41
そうして粗方片付けを済ませると、ヒヅキは防水布を畳んで背嚢の中に仕舞う。
他に片付ける物が無いのを確認した後、エイン達が使っていた天幕の解体に取り掛かる。
ここまでの旅で幾度も組み立てと解体を繰り返してきたので、手慣れたもので直ぐにそれは終わった。
解体した天幕を纏めて、ヒヅキとフォルトゥナで1張りずつ担当する。ヒヅキは背負い、フォルトゥナは空間収納に収納した。それを見る度にヒヅキは実力の差を痛感し、内心で苦笑を浮かべてしまう。
「準備はいいですか?」
一緒に担ぐと邪魔なので、背嚢を前に持ってきたヒヅキがエイン達に問うと、エイン達も各々の荷物を持って頷いた。
天上に目を向ければ、太陽は中天に差し掛かったところ。
そろそろ昼食にするぐらいの時間だが、今日はこのまま出発する。それに腹が減ったならば、各自携行している保存食を食べればいいだけの話。
最後に水筒の中身と保存食を確認した四人は、拠点にしていた場所を発った。
ヒヅキは過去視を使って、対象の後を追う。しかし、色々な幻影が邪魔で視え難い。それはエインとの探索で判っていた事なのだが、それでも面倒な事に変わりはない。
対象の幻影は他とやや色が異なるので、それを何とか見極めて追っていく。
そのまま進んでいくも、砦跡は広いので半日程度では反対側へは辿り着けない。それでも、遠くに防壁の跡っぽい残骸が確認出来た。
日が沈む前にあまり荒れていない場所を見つけると、天幕が張れる程度に片付けて天幕を張る。
その近くに防水布を敷き、ヒヅキ達は腰を下ろした。それで一息つくと、四人は保存食で夕食にしていく。
夕食を食べ終え軽く話し合いを行うと、エイン達は天幕の中に入る。
ヒヅキ達はいつもの様に夜を過ごすと、朝を迎えた。
まだ周囲が薄暗い内に朝食を済ませると、さっさと片付けを済ませて出発する。
幻影を追いながら進んでいき、昼過ぎには砦跡のホーン側の防壁に到着した。
「ここも酷いものだな」
エインの呟きを聞きながら、ヒヅキは軽く周囲を見回す。スキアはホーン側から攻めてきたので、この防壁が最初に壊された場所でもある。
防壁は完全に破壊されていて、防壁を構成していた石は盛大に周囲に飛び散っているので、スキアは思いっきり防壁に激突したのかもしれない。スキアは魔法武器でも傷つけるのが大変なので、防壁に衝突するぐらい何の問題もないだろう。
そんな防壁の状況を横目に、ヒヅキ達は砦跡の先へと進んでいく。
砦跡の先も変わらず山岳地帯なので、荒涼とした風景が続いている。
ごつごつとした岩場を登りながら1日掛けてホーンへと入るも、国境付近にはカーディニア王国側と同様に破壊された砦が在るだけで人の気配がない。周辺を警戒するも、スキアの気配もないようだ。
「こちらも酷い有り様だな」
瓦礫に混じって落ちていた白骨を目にしながら、エインが不快そうな哀しそうな複雑な声を出す。
それを見ながら、ヒヅキはそういえばと思い出していた。
(カーディニア王国側の砦跡では、骨をあまり見なかったな。スキアが食べたのだろうか?)
不自然さに思い至ったヒヅキだったが、スキアは人も好んで食べるので、そのせいだろうと考える。軽く見渡した限りではあるが、ホーン側の砦でも骨はあまり確認出来ない。
とはいえ、そんな事はヒヅキにとってはどうでもいい話。フォルトゥナぐらいに魔力量の在るような存在を食べたというのであれば警戒する必要はあるだろうが、人間ではそういった者は居ない可能性がかなり高い。たとえ冒険者であったとしても、食われる程度ではたかが知れている。
仮にフォルトゥナほどの魔力量を持つ者がこの場に居たとすれば、勝てなくとも逃げるぐらいは出来ていただろうから。




