人探し39
翌朝も問題なく早くから起きてきたエイン達。
保存食で朝食を手早く済ませると、片付けも済ませて探索をする準備をしていく。といっても、携行する水筒の中身や保存食の確認程度だが。
それらが終わると、乾燥途中の保存食を天幕の中から外に出す。
全て外に出したところで、ヒヅキとエインそれにプリスの三人は探索の為に拠点を発った。
残ったフォルトゥナは、保存食の様子を見ながら周辺の警戒を行っていく。周辺の警戒はいつもの事だし、保存食の様子を見るのももう慣れたもの。
フォルトゥナは乾燥させている保存食の近くに立って、乾燥の邪魔にならないようにしながら、じっと並べられている塊根を眺める。
(………………食料)
保存食として乾かしている塊根を眺めながら、フォルトゥナはこれが食料になるんだなと考えるも、食事については未だによく分からない。元々食事は必要なかったので、ヒヅキと行動を共にするまではろくに食事もしていなかった。
フォルトゥナは手近な乾燥した塊根を一枚手に取り、光に翳すようにしながら、それを様々な角度から観察する。
厚さ数ミリメートルの少々歪な楕円形。一口で食べるにはやや大きい。中は乳白色だが、皮の部分は明るい紫色。乾燥している為に今は硬いが、乾燥させる前は柔らかかった。
表面は凸凹としていて、少しザラザラしている。暫くそうして観察していると、フォルトゥナはその塊根を鼻に近づけてにおいを嗅ぐ。
においはあまりしないが、それでも若干土臭い。齧ってみると、弾性が強いのか多少噛み切るのに苦労する。
味は甘いが、果実のような強い甘さではなく、ゆっくりと染み渡るような優しい甘さ。
口当たりは少しぼそぼそとしているが、やや硬めなので噛み応えはある。ずっと噛んでいると若干苦みが出てくるが、味が変化するので丁度いい。
十分咀嚼した後、フォルトゥナは塊根を飲み干す。
「………………」
手元に残った半分程を眺めたフォルトゥナは、興味が失せたようにそれを口に放り込んだ。
口に入れた塊根を咀嚼しながら、フォルトゥナはやはり食事はよく分からないなと首を傾げた。
◆
拠点から発ったヒヅキ達三人は、エインの案内のままに砦内を進んでいく。
何処までいっても変わり映えのしない光景を眺めながら進んだ先に在ったのは、開けた場所であった。
石は飛んできているが、そこには建物址がほとんどないので、それも多くはない。
周囲を見回したヒヅキは、エルフの国の首都を探索した時の事を思い出しながら、訓練所だろうかと考える。
エインはその開けた場所を進むと、その奥に在った建物址で立ち止まった。
立ち止まったエインは、足元の瓦礫をどかしながら探索を開始する。
そんなエインの傍に近づき、プリスはエインの手伝いをしていく。
ヒヅキはその様子を眺めた後、適当にその辺りを探索してみるが、特に目的もなく、また今までもめぼしいモノは何もなかったので、それは単なる暇つぶしであった。
そうやって少しの間暇を潰すと、太陽が中天を過ぎて傾いている。今回も昼食は抜くというより、今回は各自好きにしろという事で、昼食を食べたければ食べればいいし、食べたくなければそれでもいい。という方針。
その為の保存食と水筒なのだから、わざわざ皆で一緒に昼食を食べる必要もない。
エイン達は今日が最後の探索という事もあり、当然のように昼食は食べないで探索を行っている。時折水筒から魔力水を飲んでいるので、問題ないだろう。
ヒヅキは探索に興味が無いので、適当な場所に腰掛けてのんびり昼食を摂る。周辺の警戒がヒヅキの役割なので、それで充分であった。
そうしてエイン達の様子を眺めながら昼食を食べ終えると、ヒヅキは座ったまま周辺警戒に支障がない範囲で過去視の制御を行う事にした。




