人探し38
プリスの報告を聞き終えると、次はエインが探索結果について語っていく。といっても、大した成果は無かったのだが。
その話が終わり、明日も探索をする事と保存食の乾燥を行うことを決める。
保存食の乾燥については見張りが一人いればいいだけなので、それはフォルトゥナが担う事となった。フォルトゥナであれば大抵の事に対処可能というのと、乾燥を終えた塊根を回収して収納出来るからというのも理由だった。
食料の多くはフォルトゥナの空間収納内に収納されているのだが、何があるか分からないので各自も携帯している。魔力水が入った水筒も一緒に携帯しているので、仮に何処かではぐれたとしても、大体2,3日は食料の心配はないだろう。
もっとも、それはエインやプリスの場合。これがヒヅキであれば1ヵ月ぐらいはいけるだろうし、フォルトゥナであればそもそも食料は必要ない。現在の保存食作りもエインとプリスの為に行われているのだから。
そうした足止めがあと1日で終わる予定だという話し合いを終えた後、出発はその次の日である事も話し合われた。
次に向かうのは、謎多き国家ホーン。何処まで進むのか、何処を目指しているのかは対象の幻影次第なので不明ではあるが、それでも砦跡から先はスキアが跋扈する危険な地帯だいう事を、ヒヅキは再度エインとプリスに諭すように話した。それでも二人の意志は変わらないよう。
もうヒヅキはエイン達の考えを改めさせる事を諦めているので、変わらないのであればそれでいいかと話を続けていく。
ついでエインにホーンについて尋ねるも、排他的で内向的な国家で詳しい事は判らないと言われた。その上で判っている事について教えてもらう。
ホーンは建国されて300年以上経っているらしく、中々に歴史ある国。それでいてベールとキャトルに挟まれている国だからか、魔法について造詣が深く、兵士も精強だとか。他にも学問を重んじているので、独自の文化が花開いているらしい。
「独自の文化?」
ヒヅキの問いに、エインは頷きそれについて説明する。
「まず魔法だが、人形を使うらしい」
「人形?」
「まぁ、ホーンが在るのは山岳地帯だからな。高所での作業など危険な作業を行う為に発達した技術だと言われているが、要は傀儡使いだな。人形の種類は様々で人型から獣型まで、姿形や大きさも様々だ。この辺は適材適所で人形を変えるらしいが、少なくとも一人一体は何かしらの人形を持っているようだな」
「同時に複数体は操れないので?」
「詳しくは知らないが、複数体同時に操れる者も居ると聞いている」
「そうなのですか」
「ああ。だが、私の知っている事など噂よりはマシ程度に思っていてくれ」
「分かりました」
「その人形もだが、他にも軍隊も我らとは少し異なる。こちらも山岳地帯だからなのだが、軍隊は少数単位で行動をしている。基本的に奇襲が多いようだな。装備も軽装で、持つ剣も刃が短めか湾曲している。腕には小振りの盾を装着しているようだ。まぁ一番の違いは、先程話した人形が加わっているところだな。中には人形のみの部隊も在ると聞く」
「人形のみの部隊、ですか?」
「ああ。熟達者になれば人形を遠隔操作出来るらしいからな」
「なるほど」
「他は生活様式は簡素で、食事も質素。恵みが限られているかららしいが、それでも最近は少し恵みが増えたらしいとも聞いている」
「そうなんですね」
詳しくは知らないと言いながら、結構な情報量を持っているエインに感心しながら、ヒヅキは興味深くその話に耳を傾けていく。
しかしすっかり夜が更けてしまったので、明日に響いてはいけないとそれも直ぐに切り上げ、片付けを手早く済ませるとエイン達は天幕の中に入っていった。




