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人探し36

 発火具を使って点けた小さな火を丁寧に育てていく。

 幸い、ヒヅキが探索した場所は燃料を保管していた場所だったのか、瓦礫の下から薪やおがくず、木炭などの燃料がそれなりの量見つかった。

 積もっていた瓦礫は元々天井だったのか、大きな石の板の下にそれらはあり、雨の影響は少ないようでほとんどが湿気ってはいなかった。なので、火の点きは悪くない。

 大分火が育ったところで、周囲はすっかり暗くなっていた。いつの間にか夕方は過ぎていたようだ。

 エインは光球が辺りを照らしているからか、まだ探索を続けている。

「………………」

 瓦礫をどかしたり掘り返したりしているので道具を使用してはいるが、それでも手で掘ったり、瓦礫や土を手でどかしたりもしているので、嵌めている作業用の手袋は既にボロボロ。替えは用意していたようだが、その際に見えた手袋の下もまたボロボロだった。

 エインは剣術を習っていただけあり、元々それなりに手に傷はあったが、それでもやはり恵まれた環境で過ごしていたからか、エインの手は庶民よりは綺麗であった。

 しかし、今ではその手は見る影もないほどに汚れている。何を探しているのかヒヅキは知らないが、余程大切な物なのだろう。

 まぁもっとも、このまま旅を続けるのであれば、手に傷が増えるのは遅いか早いかの違いでしかなかっただろうが。

 そんな事をぼんやり考えながら、ヒヅキは持ってきていた保存食を二人分用意する。ついでに寝袋を広げられそうな場所も火の近くに用意しておかねばならないだろう。

 適当な場所の石をどかして、寝ても痛くないようにその場所の小石も掃っておく。

 一通り作業を終えて寝袋をその場所に設置すると、ヒヅキはエインの方に顔を向ける。

「………………ふむ」

 まだ作業を続けているエインの姿を確認して、ヒヅキは夜空に目を向けた。

 夜空には瞬く星が一面に広がっており、空気が澄んでいるのかその瞬きがよく見える。雲はあまり無いので月明かりが存分に地上を照らしているが、満月ではないので光量は少し心許ない。

 その月も大分高くなってきているので、そろそろエインを止めた方がいいのかもしれない。

 ヒヅキは少し考え、エインの近くに寄って声を掛ける。

 声を掛けられたエインは、そこでやっと夜も大分更けていた事に気がついたようで、驚いた表情を浮かべていた。

 探索を中断して、二人は火の傍に座る。エインが探索を終えた事で、二人はいつもより遅い夕食を摂る。

 夕食を食べ終えた頃になると、探索を止めた事で急に身体が冷えてきたのか、エインは時折両手をすり合わせては火に翳していた。

 ヒヅキは持ってきていた小鍋に魔力水を入れて温めると、それを2つの容器に入れて、片方をエインに渡す。

 礼を言って受け取ったエインは、それを飲む。

「………………」

 ヒヅキはそれに目を落としながら、魔力水は温めても問題ないのだろうか? と疑問に思う。魔力を帯びているとはいえ、水である事には変わりないので害にはならないだろうが、魔力水としての効果についてはよく分からない。

 ただ、未だに頭上に光球を出しているので、ヒヅキは多少は魔力を消耗している。それが回復するのであれば問題ないだろうと思い、温めた魔力水を口にした。

 結果は、問題なし。効果が同等かどうかはさておき、魔力が回復したのを一瞬感じたので、効果自体はあるようだ。

 ヒヅキにとってはそれが判れば十分なので、直ぐにその疑問を頭の中から追い出す。

 温めた魔力水を飲みながら二人は話をしたが、探索で疲れたのかエインはそれを飲み終わる頃にはうつらうつらとしてきたので、ヒヅキはそんなエインを立たせて寝袋のところまで誘導すると、寝袋の中にエイン入れて寝かしつける。

 直ぐに穏やかな寝息を立てはじめたエインを確認すると、ヒヅキは先ほどまで座っていた場所に戻り、周辺警戒を継続しながら、火にを絶やさないように薪をくべる。

 その赤々と燃える火を眺めながら、ヒヅキはもう必要ないかと光球を消して、周辺警戒に支障がない範囲で過去視の制御を行う事にした。

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