人探し33
それを見たヒヅキは、砦に子どもでも居たのだろうか? と不思議に思うも、直ぐにそれはどうでもいい事かと思い直し、散乱しているおもちゃのひとつを拾い上げた。
手に取ったのは、ぬいぐるみ。人型をしているが、汚れているうえに中の綿が飛び出していたり、片腕が無くなっていたりと損傷が激しいので、誰なのかどころか性別すら分からなくなっている。
それ以外は至って普通のぬいぐるみ。調べてみても何かが隠されているという事もなく、汚れて損傷の激しいただのぬいぐるみ。
ヒヅキはそのぬいぐるみも元の場所に戻すと、その下に在った人形を手に取る。
それは20センチメートルほどのおそらく女性の人形で、作りは粗い。
ただ木を人型にくっ付けただけともとれる粗雑な作りだが、何故だか人形の顔の部分に描かれている顔だけはやたらと上手く、汚れや損傷も少ないので今にも話し掛けてきそうなほど。
手足の末端が潰れているが、欠損はない。見つけた時に上にぬいぐるみが覆いかぶさるように落ちていたので、そのおかげだろう。
ヒヅキは人形を裏返したりして確認したが、こちらも気になる点は何も無かった。
過去視に映る相手とこのおもちゃ達は無関係なのだろうかと思いつつ、ヒヅキは念の為に他のおもちゃも調べていくが、おかしなモノは何も見つからない。
しかし最後に手に取った潰れた手鞠を調べてみると、中から小袋が出てきた。
ヒヅキは小袋を取り出すと、他にはないかと潰れた手鞠調べてみる。しかし他には何も無かったので、手鞠を足元に戻した。
手鞠を足元に置いた後、手鞠の中から出てきた小袋を調べてみる。
「………………これは」
小袋自体は古いだけで何処にでもあるようなものであったが、小袋を開けて中を調べてみると、中には水晶の欠片がひとつ入っていた。
中から水晶の欠片を取り出したヒヅキは、その見覚えのある形や、光に当てると虹色を帯びる透明な色合いに、もしかしてと自分の持つ水晶の欠片をひとつ取り出して見比べてみる。
「……多分同じ物、だよな?」
形や色合いが似ているが、同一の水晶かはヒヅキには分からない。しかし、おそらく同じモノであろうと考え、ヒヅキは見つけた水晶の欠片を、他の水晶の欠片と一緒に仕舞う。
水晶の欠片を仕舞うと、ヒヅキはエインの方に顔を向ける。そこではまだ何かを探しているエインの姿があった。
その様子に、もう少し探し物には時間が掛かりそうだと判断したヒヅキは、過去視で視える周囲の幻影に目を向ける。
相変わらずはっきりとは視えないが、周囲を取り囲むように動いている幻影。
その幻影が円を描いている中心に水晶の欠片があった事から、この幻影と水晶の欠片とには何らかの関係がある可能性は在るだろう。しかし今まで追ってきた幻影とは別の幻影なので、もし関係あるとしたら、警戒しておかなければならないかもしれない。
ヒヅキは面倒なと小さく息を吐くと、何か分からないかと幻影を観察していく。
幻影は過去視で視えているだけなので、触れることは出来ない。
幻影の周囲を回りながら観察することは出来るが、同じ場所をぐるぐる回って重なってしまっている目の前の幻影では、観察しようにも幻影が何重にも重なっているので、辛うじて人型である事が解る程度なのでそれも難しい。重なりすぎて腕が4本から6本ぐらい生えているように視えてしまっている。
(せめてはっきりと幻影が視えるようになっていれば話は違ったかもしれないが)
何度目かのその思いを抱きながら観察を続けるが、結局何も発見出来ずに昼になる。
何かしらの成果があった様子のエインと共に昼食を摂ると、二人は次の場所に向かっていく。
到着したのは大きな建物だが、そこには壊れたり錆びている武器や防具が沢山散乱していた。
その様子に、ここはおそらく装備を保管していた場所なのだろうと予測したヒヅキは、建物の中心辺りまで進んで探し物を始めたエインを横目に、適当にその辺を探し始めた。




