人探し32
翌日は晴れだった。ほどほどに雲が出ていて快晴というほどではないが、雨はもう降らないだろう。
朝食を済ませた四人は、片付けを済ませて外に出る。当然だが、天幕の外は濡れていた。
薪などの燃料は、簡易的な小屋を作ってそこに集積していたので、一部が少し濡れた程度で済んだ。問題は竈の方。
雨曝しにしていたので薪などを燃やす中がすっかり濡れていて、このままでは燃やすのに少し手間がかかる。
フォルトゥナとエインが天幕の中の保存食を外に出している内に、ヒヅキは土を掘る為の道具を背嚢から取り出し、竈の中の土の部分を掘っていく。
石を組んで囲っただけとはいえ、中の土を掘るのは苦労する。なので、浅く中の土を掘って外に出した後、近くの大きめの石をどかして濡れていない土をすくって、それを竈の土の上に被せる。
それだけでは十分ではないが、直ぐに火を熾すので一時的にでも乾いていればいい。という判断であった。
ヒヅキがそうして竈の中に乾いた土を入れて次の竈の土を入れ替えようと場所を移すと、燃料を持ってきたプリスが土を入れ替えた竈に燃料の薪やおがくずなどを入れて火を点ける。
濡れていなくとも湿気っていたのか普段よりは火の点きは悪いが、それでも火が少しずつ大きくなっていく。ある程度火が育ったところで、プリスはヒヅキが作業を終えた次の竈に燃料を投入する。
その間もヒヅキは竈の土の入れ替えを行っていき、それを全て終えるとプリスの仕事を引き継ぐ。
ヒヅキに後を任せたプリスは、保存食作りを始める。
程なくしてフォルトゥナ達が作業を終えたので、ヒヅキはフォルトゥナに火の番を任せて、エインと共に探索に出た。
今までと違う方角ではあるが、やはり景色は大して変わらない。
やる事も同じだが、今まで探索していなかった場所なので、燃料は豊富に在る。
ヒヅキにとっては他に見るべき物も無いのだが、エインは何かしら目的を持った歩みで進んでいく。
暫く進んだところで周辺に警戒すべき相手も居ないようなので、ヒヅキは警戒をやや緩めて過去視を発動させる。そこに映るのは、小柄なひとつの幻影。
「………………?」
しかし不思議な事に、ヒヅキがいくら周囲を見回してみても、その幻影が何処から来たのか分からない。
近くに他の幻影も無いので、見落としているという事はないだろう。
(……まぁ、過去視を完全に制御している訳ではないからな)
可能性としては、その幻影が丁度視る事が出来るギリギリの時間軸の幻影で、来たところが視えなくなっているという事。しかしそれでは、帰りまで視えないのは説明がつかない。
ではどういうことかと思案したヒヅキは、単純にまだ過去視を制御できていないので、上手く機能していないだけだろうという事にした。でなければ、過去視でも捉えられないような相手か、もしくは突然その場に現れた後に忽然と姿を消した事になる。そんな事が出来る者など限られてくるし、ヒヅキの経験から、そういった者は大抵ろくな相手ではないだろう。
これ以上面倒くさい事はごめんだ。という思いからそういう事にしたが、それでもそこで過去視を切らずに、その幻影を観察する。
小柄な幻影は何かを探しているという風でもあるし、ただその場を歩き回っているだけの様にも視える。はっきりと輪郭が見える訳ではないので、同じ場所をぐるぐると歩き回っているその幻影は、繋がって青白い立体的な円にも視えた。
「………………」
その動きが気になったヒヅキは、近くの建物で何かを探しているエインを確認した後、素早くその幻影の許まで移動する。
幻影が円を描いている場所の中心には瓦礫しかない。何かそこに埋まっているのだろうかと考えたヒヅキは、足元の瓦礫を除け始める。
その円はやや広いので、2、3個瓦礫を除ければ終わりという訳ではないが、それでも直ぐに全ての瓦礫を除け終わった。
そうして瓦礫を除けた場所には、ぬいぐるみや人形などの潰れた子どものおもちゃが散乱していた。




