人探し28
昼食を終えると、引き続き探索を行う。
とはいえ、探索範囲が広い為に1ヵ所を長々と探索する時間は無いので、1軒1軒を軽く調べては次に向かう。というのの繰り返しだ。
それでも建物の構造がどこも似たようなものなので、自然と調べる場所というのが決まっており、調べるのにはそこまで苦労はしない。
エインに至っては建物の構造自体最初から把握していたようで、何処を調べればいいのか理解した無駄のない動きで探索していく。
そうして探索していき、帰りの時間を考慮して夕方になる前には拠点としている場所へと戻ることにする。
結局、ヒヅキは手ぶらもなんだからと、燃料を運べるだけ回収しただけで終わったが、エインは何やら小物類を幾つか収集していた。
中には装飾品なんかもあったが、ヒヅキがちらりと見たそれは高価な物ではなく、そこらの街に行けば何処にでも売っていそうなありきたりな物。それでいて、誰かが長年使っていたかの様に古ぼけた品であった。
それを見た時にヒヅキは誰かの形見だろうかと考えたが、直ぐに詮索する必要も意味もないと思い直し、その事を頭の中から追い出す。
帰りは特に会話も無く、ヒヅキは何処か寂しげなエインと共に荒れ果てた砦跡の中を進む。
二人が戻ってくると、フォルトゥナとプリスは夕食を作る傍らで、乾燥した保存食の回収や片付けをしていた。
時刻的には、夕方になって少し経った時間。既に周囲は薄暗く、早々に夕食を済ませないと直ぐに暗くなってしまうだろう。
戻ってきたヒヅキは、持ってきた燃料を所定の場所に置く。その間、エインはフォルトゥナ達の手伝いを始める。
そうして準備が整うと、四人は夕食を食べ始めた。
それから夕食を食べ終えると、明日の予定について話し合う。といっても、今日と同じ事を明日もするだけだが。
そんな話し合いとも言えない話し合いを終えると、エイン達は天幕に入り、ヒヅキ達は見張りを行う。
いつもの様にヒヅキは過去視の制御に集中していく。と、そこに。
「近頃、何やら楽しそうなことをしているわね?」
ずっと姿を消していたウィンディーネが、ヒヅキの目の前に姿を現して声を掛けてきた。
「楽しい事、ですか?」
そんなウィンディーネに、ヒヅキは関心を示す様子は無く、生返事の様な言葉を返す。
「ええ。その大量の魔力の循環よ。今度はどんな魔法を覚えたのかしら?」
「………さぁ? 仰っている意味が分かりませんね」
値踏みでもする様な声で語り掛けてくるウィンディーネだが、ヒヅキは変わらぬ声音で白を切る。
「ふふ。流石にそれは厳しい嘘だと思うわよ?」
「そうですか? 実際、仰っている意味が分からないのですから、しょうがないではないですか」
あくまで意味が分からないという態度を崩さないヒヅキに、ウィンディーネはおかしそうに笑う。
「ふふふ。まぁ、ヒヅキがそれでいいならいいのだけれど」
「それで、用事はそれだけですか?」
煩わしそうにそう告げると、ウィンディーネは尚もおかしそうに笑うのみ。
「そうね。何やら面白そうな事をしていたから気になっただけだからね」
「そうですか。では、引き続き放っておいて下さい」
「んー、それはどうしようかしら?」
ヒヅキの言葉に、ウィンディーネはからかうようにそう言ってヒヅキの隣に腰掛ける。
「………………それでしたらお好きにどうぞ。こちらも好きにさせてもらいますから」
「あらあら。うふふ」
しな垂れかかるようにして寄りかかるウィンディーネだが、ヒヅキはそれを気にせず集中していく。
そんなヒヅキをおかしそうにしながら、ウィンディーネは間近でヒヅキを観察する。
ヒヅキはそれを邪魔くさいと思いながらも、努めてウィンディーネの存在を意識の外に追いやると、より深く集中していくのだった。
 




