人探し26
プリスが塊根を茹でて薄く切っている間に大甕を洗い終えたヒヅキは、洗ったばかりの大甕をプリスが調理をする起点としている場所の近くに改めて設置する。
プリスの意見を聞きながら微調整しつつ大甕を設置した後、ヒヅキはその自身の身長ほどの高さがある大甕の中に魔力水を注ぐ為に、近くに落ちていたそこそこ平らな大きめの石を近くまで持ってきて踏み台にする。
水瓶から魔力水を次々に注ぎながら、ヒヅキは改めて踏み台を作らないとなと、足下に目を向けて思う。
砦内に転がっている石のほとんどが元々建物を形成するのに用いられていたからか、整った石が多い。
勿論壊れて欠けている石も多いのだが、それでも道端に落ちているような石よりは平らな部分が多いので組み易い。
ヒヅキは周囲を見回して、踏み台によさそうな石を探していく。出来れば1段ではなく数段の階段状の方がいいだろうから、それを踏まえて選定する。
水瓶を急な角度に倒しているので、大甕の中へとどばどばもの凄い勢いで魔力水が注がれていくが、流石にヒヅキの身長ほどの高さに、それに見合った周囲の大きな甕であるので、中々溜まってはいかない。
途中で水を必要とする場所に水を供給するので、手が止まるのも原因だろう。
昼過ぎからそれを行い、夕方になっても大甕の半分ほどしか溜まらない。それでも時間も時間なので中断すると、大甕と一緒に持ってきて洗っておいた大きな木製のふたを大甕の上に乗せる。それと一緒に、洗った柄の長い柄杓も木ぶたの上に置いておく。
そこまで終えると、ヒヅキはまだ明るい内に目星をつけておいた石を拾って、大甕の近くに集める。
十分な数の石を集め終えると、ついでとばかりに、先程まで使っていた踏み台とは別の方向に新たな踏み台を作っていく。
それが終わるころには周囲は大分暗くなっていたが、まだ夕陽が空を照らしている。
日が完全に暮れる前に夕食にしようと、ヒヅキは皆が居る方に目を向けるも、そこには既に保存食の片付けや夕食の準備などを終えた三人が待っていた。
それに申し訳ないと思いつつ、ヒヅキは手の汚れを水筒に入れていた魔力水を使って洗い落とすと、三人と合流して夕食にする。
夕食に限らず最近は毎食茹でた塊根だが、それで何も問題は出ていない。一緒に木の実も食べてはいるが、塊根は栄養価的にも優れているのだろう。
味は木の実のおかげでなんとかなっているし、食感も同様だ。旅の途中で十分な食事にありつけるだけでも上々なので、贅沢な悩みだが。
夕食を終えると、いつもの様に話し合いを始める。
とはいえ、現状は砦跡を探索しているだけなので、半ばただの報告会と化しているのだが。
現在は集めた石の量は結構なものになったようで、明日はフォルトゥナとエインの二人掛かりで竈を作っていくらしい。鍋の数や燃料も十分あるので問題ないだろう。
プリスは変わらずで、ヒヅキはとりあえず大甕に水を満たす事を優先させることにする。別に満杯にする必要はないが、それなりに在った方が楽が出来るだろう。主にヒヅキが。
それが済めば燃料の補充を行う予定。長く滞在する予定はないが、竈を増やすのであればそれだけ燃料の消費も増える事になるので、念の為という訳だ。
フォルトゥナとエインは、竈を作り終えればそのまま砦跡の探索移る予定だが、その時はフォルトゥナと代わった方がいいのだろうかとヒヅキは考える。
エインの護衛としてフォルトゥナかヒヅキが付いていく予定ではあるが、フォルトゥナはエインから距離を取っているので、二人で色々と作業させるのと違い、二人っきりで探索というのは嫌だろうと思ったからだ。
ヒヅキの仕事は燃料の確保なので、フォルトゥナでも問題はない。むしろ適任かもしれないと考え、竈作りを終えた後の事を話す。
そして、その案に同意を得られたところで話し合いが終わった。




