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人探し14

 山道を登り始めて幾日経過したか。10日も経っていないはずだが、休憩しながらとはいえ、頂上に到着するのに随分と時間が掛かってしまった。

 ヒヅキは下を流れる雲を眺めた後、登ってきた山道の方に目を向ける。

(大分遠回りするように作られていたのだろう)

 螺旋を描くようなというほどではないが、振り返ってみると緩やかな曲線で形成されたその山道は、必要以上に蛇行していたように思えて、ヒヅキはそう考えた。

 とはいえ、今回の目的は登山ではなく人探しなので、捜索対象が同じ道を通っていたのであれば、それに気がついたところで意味はない。

 夕方前に頂上に到着したが、いつもよりも早いが区切りという事で野営の準備を行う。

 頂上は木の数が道中よりも少なく、間隔はかなり広い。場所によっては問題なく天幕を2張り並べて張れそうだが、ヒヅキとフォルトゥナに天幕は必要ないので、張る天幕は1張りのみ。

 以前気温が下がってきたので火を熾すべきかと考えていたが、それはフォルトゥナが扱える、効果範囲は狭いものの範囲内を温めるという魔法で解決した。

 その魔法に相変わらず凄いものだと感心するヒヅキだったが、フォルトゥナにしてみれば大した事ではなかったらしく、ヒヅキが賞賛すると、嬉しそうにしながらもとても不思議そうな顔をされた。

 フォルトゥナの魔法の効果範囲内で夕食を終えると、話し合いをする。幻影はそのまま下山しているので、それを追うだけだが。

 それを終えると、エイン達は天幕の中に入っていく。フォルトゥナが天幕の近くに居る間は、天幕内も温かい。

 ヒヅキは変わらず過去視の制御を行いつつ、周囲の様子を調べていく。

 ここに来るまで何度か遠くで動物の反応を確認したが、その数は少なく、寂しい山といった印象がある。頂上にも動物は居ない。

 スキアも近くには全く居ないようなので、やはりエインの話通りに国境付近までしか姿を現さないのだろう。

 それで油断していい訳ではないが、必要以上に気を張る必要もない。

 そんな寂しい山だが、食料自体はそこそこ採れるようで、味さえ気にしなければ、そのまま食べられる木の実が結構採れた。少なくとも、ヒヅキとフォルトゥナにとっては十分過ぎるほどに。

 以前森で採った果実は食べきったが、ガーデンで買った保存食はまだ残っていた。しかし、そちらはエインとプリスに渡したので、ヒヅキとフォルトゥナは木の実を主食にしているが、ヒヅキの場合は食事自体がほぼ不要なのでそれで十分。フォルトゥナに至ってはどうなっているのか、食事も睡眠も必要としていない。

 フォルトゥナ曰く、魔力が在れば問題ないという事であったが、ヒヅキはそれを完全には理解出来なかった。流石は英雄と言ったところか。

 そんなフォルトゥナが食事や睡眠をとるのは、単にヒヅキに合わせているに過ぎない。ヒヅキが食事をするので食事を摂り、ヒヅキが眠るので一緒に睡眠を取る。ただそれだけだ。

 現在もヒヅキの隣で周辺を警戒しているフォルトゥナ。今日の見張り番はヒヅキだが、感知魔法の性能は圧倒的にフォルトゥナの方が上なので、ヒヅキは自分の警戒は要らないよなと、内心で苦笑する。

 とはいえ、そんな状況なので警戒にそこまで集中する必要が無いという部分は、ヒヅキもありがたいと思っていた。おかげで過去視の制御に集中できる。

 現在の制御の状況は、最初と大して変わっていない。

 ずっと完璧に制御しようとしているのだが、現在のヒヅキでは発動させるのが精一杯。なんとか魔力量を若干減らす事には成功したが、それでも日中使用するだけでも魔力水は欠かせない。

 そんな状況では、視れる範囲の調整や制限など夢のまた夢。何年も制御に集中すれば微かにそこがみえてくるかもしれないが、それでもろくに調整や制限は出来ないだろう。現在可能なのは過去視の発動規模を狭めて、強引に魔力量と視認範囲を狭める程度。

(今のままでは後10年……いや、100年あっても厳しいかもしれないな。感知魔法の時の様に何か一気に進展する切っ掛けでもあればいいのだが……)

 ヒヅキは制御に集中しながらそう思うも、そんな都合よく事が進む訳もないので、もう少し頑張ってろくに進展がみられなかったら、あの声の主にでも助言を求めてみようかと考えるのだった。

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