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人探し12

 確実に会う手立てがないという事にヒヅキはそっと息を吐き出すと、天上へと目を向ける。そこには徐々に暗くなってきている空があった。

「そろそろ野営の準備をしましょうか」

 もうすぐ夕方かと判断したヒヅキは、振り返って皆にそう告げる。

 その後、天幕を張ったり夕食の準備を済ませたりすると、そのまま夕食にする。

 それも終えると、いつも通り話し合いを終えてエイン達は天幕に入っていく。

 ヒヅキは見張り番をしながら、過去視の魔力制御に集中する。ついでに明日は軽く寝ようかと思っているので、明日の見張り番である、隣で起きているフォルトゥナにその事を伝えておく事にした。

『フォルトゥナ』

『はい! 何でしょうか? ヒヅキ様』

『明日は私も寝ようと思うので、見張り番の方はよろしくね』

『お任せください! スキアだろうと何だろうと、ヒヅキ様の睡眠を妨げる事だけはさせません!!』

『……よろしくね』

『はい!』

 気合の入った声で返事をするフォルトゥナに、ヒヅキは少し困ったような笑みを浮かべながらも、まぁいいかと思うことにする。何であれ邪魔されないのであればそれでいいと。

 フォルトゥナとの会話を終えると、ヒヅキは再度過去視の魔力制御について集中していく。

 そうして夜を明かすと、翌日も同じように幻影を追って山道を進み、夕食を終えて話し合いを終える。

 エイン達が天幕に入った後、ヒヅキは少し過去視の制御を行い夜も更けたところで、フォルトゥナに一言告げてから木の根元に座って幹に背を預けると、眠りにつく。

(さて、どうなるか……)





『まぁお呼びのようだし、期待には応えてあげるよ』

 自分以外が真っ暗な世界で、ヒヅキがそれを認識する前に男の声が届く。

(それはありがとうございます)

 現状を確認しながら、ヒヅキは魔法の事も含めた礼を声の主に告げる。

『それで? 君は何を訊きたいのかな?』

(新しく修得させて頂いた魔法についてです)

『うん。それでどうだい? まぁまぁ使える魔法だったと思うけれど?』

(はい。人探しにとても役立っています。おかげさまで無駄に探さずに済みそうですから)

『それは良かったよ。それで? 何が訊きたい?』

(この過去視とでも言えばいいのでしょうか? 過去が視える魔法ですが、視える範囲や対象を調整できないのでしょうか?)

『出来るよ。年代はあまり昔は難しいけれど、10年以内なら君でもいけるんじゃないかな? まぁ、今の君なら数年ぐらいだろうが、それも直ぐに伸びるさ。そして対象だが、こちらは大まかにしか無理だね。具体的には、個人の指定は無理だけれど、人間とかの大まかな指定ならば可能だ。ある程度指定範囲を狭めたいのであれば、何年前のこの期間にここを通った人間とかかな。過去を視る期間の指定は可能だから』

(なるほど。思ったよりは融通が利くのですね)

『そうだね。君がしっかりと魔法を掌握出来たならば、いずれそんな事も出来るだろうさ』

(そうですか。それだけでいいのでしたら、なんとかなりそうです)

『ははっ。流石だね。それを扱えそうだと判断出来る君は流石の一言だよ』

(そうですか?)

『ああ。それは中々制御が難しい魔法だからね』

(それは理解出来ていますが)

『うん。まぁ、それでいいさ。頑張ってくれ給えよ。君なら扱えると思ったから、僕も君にその魔法を授けたんだからね。時間が掛かったのは申し訳ないが』

(いえ。感謝しています)

『そうかい? それならよかったよ』

 ヒヅキの言葉に声の主は軽くそう返すと、他に訊きたい事はないかと尋ねてくる。

 それに暫しヒヅキは思案するも、訊きたかった事は聞けたので、他に尋ねる事もなかった。魔法の制御ぐらいは自分でするべきとも考えていたから。

 それをヒヅキが告げると、声の主は『そう』 とだけ口にした後、少し考える間を開ける。

『まぁ、また必要ならこうして話せばいい事だ。それに、もうそろそろ起きる頃のようだ』

 声の主がそう言うと、ヒヅキの意識は白く染まっていった。

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