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人探し

 ガーデンから北西におよそ200キロメートルほど進んだ場所に森が在った。

「………………ふむ」

 その森の中に少し大きめの湖がある。ヒヅキはその湖の縁に立ち湖の中を覗いた後、周囲の様子に目を向ける。

「ここは相変わらずだな」

 覗いた湖面は底まで見えるほどに透明度が高く、水などないかの様にも見えるほど。

 その湖を囲むように生えている木々は、もう大分寒い時期になったというのに果実を大量に実らせていた。

「ウィンディーネの影響が未だに残っているのか」

 以前訪れた時よりは木々の実りは少ないとはいえ、それでも十分過ぎるほど。それでいて不自然なまでに実りが多い。

「そのようね。この辺は他の神の影響が少ないのでしょう」

 ヒヅキの横に立つ細身の美女、ウィンディーネがヒヅキの呟きに応える。

 現在ヒヅキは、ヒヅキ以外にフォルトゥナ・エイン・プリス・ウィンディーネの四人と旅をしていた。

 全員ウィンディーネの存在を知っているので、ウィンディーネは姿を現している。

「そうですか。まぁ、こちらにとっては都合がいいので何でもいいのですが」

 木に近寄り果物の収穫を始めたヒヅキは、ウィンディーネの言葉にそう返す。

 現在は夕方前なので、野営の準備を始めるにはいい時間帯。ヒヅキとフォルトゥナはほとんど休息を必要としていないが、エインとプリスには定期的に休息が必要であった。

 ウィンディーネに至っては、休息を一切必要としない。ウィンディーネが休む必要がある場合は力を使い過ぎた場合のみで、そもそも疲労という概念そのものがウィンディーネには無い。そのため、休憩は主にエインとプリスの為であった。

 その事をヒヅキとウィンディーネは気にしないのだが、元々エイン達に対して良い感情を持っていないフォルトゥナは、不満を持っていた。とはいえ、フォルトゥナはエイン達を無視する事でそれを二人に向ける事は無い。

 自分達で食べる分の果実を収穫したヒヅキ達は、木の傍で防水布を敷いて、その上に腰を下ろす。

 まだ明るい内に夕食を食べ終えると、寝る準備を行う。

 ウィンディーネは寝る必要が無いので、湖の方に移動して何かしている。

 夜の見張りはヒヅキとフォルトゥナが交代で行う。二人はスキアですら察知可能なうえに、あまり睡眠を必要としていないので、見張りにはうってつけであった。

 エインとプリスは何もやることがない事に心苦しくあるのだが、しかし実際やれる事といったら果実の収穫ぐらい。料理は火を熾さないので作る機会が無い。

 それこそ、最初にエインがヒヅキに告げた通りに、その身を捧げるぐらいしか残っていないのだが、ヒヅキはそれに欠片も興味を示さないので、現状のエイン達は、ただのお荷物でしかなかった。

 実際、エイン達のせいで一行の移動速度は鈍っている。フォルトゥナが不機嫌なのは、その辺りが原因であった。

 日が暮れて気温が下がり出した頃。持ってきていた毛布に包まったエイン達が眠りにつく中、見回りで起きているヒヅキは、隣で見回りの番でもないのに起きているフォルトゥナへと目を向ける。

『別に急ぎではないのだよ?』

『それは分かっておりますが……』

 旅に出てもう何度目かの会話。

 それでもフォルトゥナは納得出来ないようで、申し訳なさそうに目を伏せた。

『まぁ、フォルトゥナの気持ちは少しは判るけれど』

 ヒヅキは約束した手前、エイン達の事を邪魔だとは思っても、邪険には扱わない。それでも、やはり自力でスキアと戦えない者というのは、足手まといでしかなかった。

『それでも、カーディニア王国であれば当分はスキアの襲撃はほぼ無いと思うんだよね』

 別に敵はスキアだけではないのだが、身近で最も面倒な相手という訳で、その名を挙げる。

『ですが、やはり移動速度の遅さというのは考えものかと』

『それはまぁ。探索場所が遺跡の奥となると支障は出るだろうけれど、今から向かう場所は攻略済みだから安全ではある……のだが、それでもやはり時間はかかりそうだね』

『はい』

『しかし、約束は約束だからね。もう少しぐらいは旅らしい事をしないといけないと思うんだよ』

『それは……』

『うん。私の我が儘だよ。だからもう少し待って欲しいな』

『………………畏まりました』

 そう言って不承不承頷いたフォルトゥナ。しかしそんなフォルトゥナに、ヒヅキは不満があるならフォルトゥナが離れればいいとまでは言わなかった。

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