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再会120

「それで、ガーデンを出る時は分かったが、その後はどうする?」

「遺跡に向かいます」

「遺跡ね」

「その後はカーディニア王国内を探索しながら進みますが、明確な目的地は現在ありません」

「何を探すんだい?」

「人? です」

「何故疑問形なんだ?」

「詳細は不明なので」

「ふむ?」

 お道化るように肩を竦めたヒヅキに、エインは訝しげな目を向ける。

「それで、色々調べていくのですが、その際に国境を超えるかもしれません」

「ふむ。国境を、か」

「ええ。つまりはスキアの跋扈する地に足を踏み入れる事になるかもしれないという事です」

「それで?」

「はい?」

「私達に何を期待しているんだい? まさか、危険だからここに残れとでも言うつもりかい?」

「いいえ。約束通りにちゃんと一緒に旅に出ますよ。しかし、もしも国境を超える必要が出てきますとスキアの脅威がありますので、その時にはお二人には安全の為にガーデンに戻っていただければと。勿論お送りしますので」

「ふむ……」

 そのヒヅキの言葉に、エインは自分の顎を支えるように親指を顎の下に当てると、少し思案して口を開く。

「別に足手まといだというのであれば、直接そう言ってくれても構わないのだが?」

「それは――」

 違いますとヒヅキが続けようとして。

「足手まとい。だから最初から要らない」

 隣でずっと黙っていたフォルトゥナが端的にそうエイン達に告げる。

 その声音は平坦なのだが、しかし、口にした者の不機嫌さが窺い知れる色が僅かに滲む。

「ふむ。これは初対面での失態が原因ではないようだな」

 やや鋭さの在る目でエインはフォルトゥナを見詰めると、思案するような声で呟く。

「不要。それだけ」

 その呟きに、フォルトゥナは路傍の石でも見るような関心の無い目をエインに向けたまま、簡潔に答えた。

「なるほど。随分と嫌われた。というよりも、随分と慕われているようだね?」

 フォルトゥナからヒヅキの方に目を向けたエインは、呆れとも感心ともつかない目を向ける。

「まぁ、そうですね。しかし、足手まといという訳ではありませんが、スキアがうろついている場所は危険ですので、念の為にお二人にはその時に戻って欲しかっただけですよ」

 とりあえず事実ではあるので軽く肯定して受け流すと、ヒヅキは話を戻す。

「まぁそれは分かるが、戻るつもりはないぞ? 別に死んでも構わない訳だし」

「それはそれでどうなんでしょうか」

「はは。君と旅をするのだ。その程度とうに覚悟している。そのために身辺を整理してきた訳だしな」

 軽く笑うエインだが、その瞳は真剣そのもので、折れるつもりはないらしい。

「………………はぁ」

 しばらくエインと見つめ合ったヒヅキは、目を逸らしてため息を吐く。

「では、この話は今は措いておきましょう。それで、予定は先程言った通りに何もありません。目的は人探し。ただし詳細不明というだけです」

「どの様な人物なのだ? 判っている部分を聞きたい」

「何も。性別も見た目も性格も何もかも。出身地なんかも当然わかりません」

「ふむ。では、どうやって探すんだい?」

「地道に」

「……それで見つかるのか?」

「さぁ? 半ば思いつきなもので」

「……そうか。まぁ、判ったよ。それでは明日は早いようだし、そろそろ部屋に戻るとするよ」

 立ち上がったエインは、ヒヅキにそう告げて扉の方に進むが、その途中で何かを思い出したように立ち止まり振り返る。

「ああ、そうだ。風呂はまだだろう? 一緒に入らないかい?」

 艶っぽく問い掛けるエインだったが、ヒヅキは直ぐにそれを素気無く断った。

 それにエインは少し残念そうに肩を竦めると、部屋を出ていく。

 エイン達が部屋を出ていって程なくして、侍女が風呂の用意が整った事を告げにやって来たのだった。

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