再会116
侍女に案内されて食堂へと移動する。
食堂では先に来ていたシロッカスとアイリスに挨拶をして、ヒヅキは侍女が引いた椅子に腰掛けた。
隣に同じようにしてフォルトゥナが腰掛ける。これがシロッカス邸食べる最後の朝食だが、昼食までは世話になる予定なので、最後の食事ではない。それでも、シロッカス達には残り少ないヒヅキ達との時間だからか、いつもより多く会話をした。
そんな賑やかな朝食を終えて部屋に戻ると、ヒヅキは周辺に感知魔法を行使しながら穏やかに時間を過ごす。
途中で魔力水を飲んでみたが、消費した魔力が微量過ぎて魔力の回復は実感出来なかった。
そんなヒヅキの隣で、フォルトゥナはフォルトゥナで魔法道具作製に必要な道具を取り出して、何かの作業をしていた。魔法道具作製の道具を取り出して作業しているので、何か魔法道具でも作製しているのだろう。
感知魔法の修練をしていたヒヅキは、その作業で魔力が動いているのを何となく感じ取ってはいたが、気にしない事にして、感知魔法に集中する。
そうしているとあっという間に時間が過ぎたようで、侍女が昼食に呼びに来るのを捉えたヒヅキは、修練を続けながら侍女に応対する為に扉まで移動していく。
ゆっくり扉に近づくと、丁度侍女が扉を叩いたところで扉の前に到着して扉を開いた。
そんな事ももう何度目かだからか、侍女も特に驚くような事もなく、淡々と昼食の準備が整った事が告げられる。
それにヒヅキは応対すると、フォルトゥナと共に侍女の案内で食堂へと移動していく。その間もヒヅキは感知魔法を行使し続ける。どうやらまだエイン達は到着していない模様。
食堂に到着すると、先に来ていたシロッカスとアイリスに挨拶を行う。その後に、侍女が引いた席に座る。
直ぐに用意された昼食を、食前の祈りを捧げた後に食べていく。
シロッカス邸での、ガーデンでの最後の食事を堪能しつつ、ヒヅキはエインについて尋ねたが、いつ頃来るかはやはり分からないようであった。
それでも昼食後に少し待って出ていく予定なのだが、ヒヅキは何となく昼食後直ぐにエイン達はやってきそうな気がしている。
そんな考えを抱きながら、最後という事で朝食時に引き続き頻繁に話を振ってくるシロッカス達と会話をして、朝食に続き賑やかな昼食は終わった。
部屋に戻ったヒヅキ達は、椅子に座って一息ついてから、用意した魔力水を飲む。
少しの間食休みしてから、ヒヅキはシロッカス邸を出る事にした。その事をフォルトゥナに話すと、フォルトゥナは自分の背嚢を膝に置いたまま、何処か不機嫌そうな顔をしながら、出発を今か今かと待っている。
そんなフォルトゥナにヒヅキは少し苦笑するも、微笑ましくもあるので、特に何も言わずに窓の外に目を向ける。
「ふむ」
そこでシロッカス邸に向かってきているエイン達の気配を捉えたヒヅキは、ちらりと隣に目を向けて、不機嫌そうにしている理由を察した。
ヒヅキとは比較できないほどに広域の感知を行えるフォルトゥナが、エイン達の接近を気がつかないはずがない。それどころか、常時捕捉して動向を監視していても不思議ではない。
エイン達がやって来るのを捉えたヒヅキは、容器に残っていた魔力水を飲み干すと、片付けを行い背嚢を手にする。
『さて、そろそろここにエインさん達が到着するから、出る用意をしておこうか』
『はい』
背嚢を手に立ち上がるフォルトゥナ。それで二人は出発の準備は出来たが、とりあえず侍女が呼びに来るまでまだ時間があるので、ヒヅキはフォルトゥナに座って待っている様に伝える。
程なくしてエイン達がシロッカス邸に到着する。
それからエイン達はシロッカスと会って軽く言葉を交わすと、シロッカスに指示された侍女がヒヅキ達を呼びに移動を始めた。




