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再会114

 そんな不器用なヒヅキの慰めだが、フォルトゥナにとっては労いの言葉の時同様にそれで十分らしく、ヒヅキに頭を撫でられながら、俯かせた顔には幸せそうな笑み浮かべている。

 とはいえ、不甲斐ないと思っているのもまた事実らしく、幸せそうな笑みながらも、何処か哀しげな暗い雰囲気も同時に纏っていた。

 しかし、ヒヅキからは俯いているフォルトゥナの表情は窺えないので、黙ったままのフォルトゥナに、ヒヅキは余程堪えたのだろうかと考えるも、だからといって何か気の利いた事が言える訳でも、何をすればいいのかも分からないので、そのまましばらく優しく頭を撫で続ける。

 程なくそうしていると、フォルトゥナがゆっくりと顔を上げた。

『ありがとうございますヒヅキ様。おかげで心が軽くなりました』

 ヒヅキと二人きりの時に浮かべるいつもの無邪気な笑みではなく、大人びた笑みを浮かべて感謝を告げるフォルトゥナ。

 そんな姿にヒヅキは問題なさそうだと判断すると、頷いた後に水瓶と容器を取り出して魔力水を用意する。

『フォルトゥナも飲む?』

 一緒に用意したフォルトゥナの分の容器を差し出して問い掛けると、フォルトゥナは感謝の言葉と共にそれを丁寧に受け取った。

 ヒヅキは魔力水を飲みながら、窓の外に目を向ける。

『明日にはここも発つから、ここからの夜の景色もこれが最後か』

 別に綺麗な景色だとか、変わった物が見えるとかではないのだが、朝晩魔力水を飲みながら同じ風景を眺めていると、多少はこの風景にも愛着が湧くというもの。それに、ヒヅキは以前にもここからの景色を眺めていたのだから、やはり多少は愛着があるのだろう。

 とはいえ、だからといって拘る訳ではないので、そう言いながらも視線を外せばもうどうでもいい事になるのだが。

 まぁそんな事はさておき、翌日にはエイン達もシロッカス邸を訪れる予定になっているのだが、その時間については詳しくは不明。シロッカスに訊くと、到着は午後らしいが、それ以上は判らないそうだ。

 もしかしたら夕方になるかもしれないし、日暮れになるかもしれない。それはエイン達次第ではあるが、ヒヅキはフォルトゥナとの約束もあるので、あまり長くは待つつもりは無かった。長く待っても夕方前だろう。しかし、実際は昼過ぎには発つだろうが。

『明日はまずどちらへ?』

『そうだね……対象が眠っていたと思しき遺跡がある方角を目指すつもり』

 そう言って、ヒヅキは遺跡がある方角に顔を向ける。

『といっても、廃村と森ぐらいしかないから、途中で補給に村に立ち寄る事も出来ないし、聞き込みも出来ない。ただ、現在は復興の為にここから誰か向かっている可能性もあるが』

 ガーデン周辺の町村の復興を行っているという話だったので、道すがらに誰かに会う可能性はある。だが、それは最近そこに移動した者ばかりなので、探し人の存在を知る者は居ないと思われた。

 しかしもしもそうであれば、補給が出来る可能性が僅かに出てくる。もっとも、仮に可能だったとしても、ヒヅキにそのつもりはないが。

『あの者達の食料はどうされるのですか?』

『自分達で持ってくると思うよ? だから、あちらはあちらで自分達の荷物を持ってくるだろうから、こちらはこちらで今まで通りでいいと思う。二組で旅するようなものだね』

『なるほど。分かりました』

 ヒヅキと一緒の扱いをされて嬉しそうなフォルトゥナ。しかし、ヒヅキはそれを気にする事なく話を続ける。

 そのまま話をしていると、侍女が風呂の用意が整った事を報せに来た。

 その侍女の案内で風呂場に移動すると、ヒヅキはフォルトゥナと共に入浴する。

 入浴し終わると、部屋に戻って窓際で涼んでから眠りにつく。ガーデン最後の眠りを堪能する為に、少し早めの就寝となった。

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