再会112
エインとの会談が終わったのは、夕方になって直ぐぐらい。
ヒヅキは外で待機していたらしい侍女と共に、フォルトゥナがアイリスへと魔法の講義を行っている部屋へと戻っていく。
部屋に到着すると、案内してきた侍女は戻っていった。
夕食までまだ少しだけ時間があるので、まだ続いている講義を見学する。
ヒヅキの目には、エインと会う前とさほど変わっていないように思えるが、魔力が視えないので実際のところはどうなのかは分からない。
ただ、相変わらず魔力水はかなりの勢いで飲んでいるようだ。
解毒魔法は、傍から見ている分にはよく分からない魔法である。なにせ、毒や病気などの治癒をする魔法なのだから、傍から見ても何をしているのかいまいちよく分からない。
水を創る魔法であれば、小さかろうと水の塊が現出するし、治癒魔法も怪我が治るので理解はできる。もっとも、アイリスの場合は治癒も補助程度しか行えないので、怪我を治療するという訳ではなく、こちらもまた地味で分かりにくかったが。
しかし、それでもまだ解毒魔法よりは理解出来た。解毒魔法は、流石にわざわざ毒を呷ったり病気になる訳にもいかないので、ほとんど知識と魔力操作だけで覚えろと言っているようなモノなのだから。
身近に病気の者でも入れば実験台に出来たかもしれないが、幸いシロッカス邸で働く者に病気の者は居なかった。勿論シロッカスも元気だし、アイリスやフォルトゥナ、ヒヅキも病気は患ってはいない。
結果として感覚で覚えさせることになっているのだが、部外者を連れてくるのは流石に避けた。何処から災いがやって来るかは分からないうえに、結局解毒魔法もアイリスでは補助程度にしかならないので、過度な期待をさせてしまっては申し訳ないというのも理由であった。
現在フォルトゥナがアイリスに行っている講義は、ヒヅキが見る限りでは体表に魔力を流しているようにしか思えない。
ヒヅキも長いこと魔力に触れているので、魔力は視えずとも感じる事は出来ていた。それも結構敏感に。それでもそうとしか認識出来ない程度に地味な講義。
その講義を眺めながら、ヒヅキはアイリスが修得しようと努力している解毒魔法について思い出す。といても、これは少し前にヒヅキがフォルトゥナに聞いた話でしかないのだが、今回教えている解毒魔法は途中までは治癒魔法と同じらしい。
治癒魔法は身体に働きかけ身体の機能を活性化させる魔法で、解毒魔法はそれに加えて、身体を蝕んでいる元凶を探し当てて弱らせる必要があるのだとか。とはいえ、所詮はどちらも補助。肝心な部分は身体の機能頼みなので、そこが弱っていたり、そもそも機能していなければ無意味な魔法という話だった。
それを思い出し、確かに傍から見ても判らないなとヒヅキは内心で苦笑する。
そんな事を考えたところで、ヒヅキは侍女がアイリス達を呼びに動いたのを捉えた。
エイン達はシロッカス邸から離れていっているので、話し合いは直ぐに終わったのだろう。どうなったのか気になったが、おそらくヒヅキの望まない結果で話が纏まったと思われる。
侍女が夕食に呼びに来ているのはフォルトゥナも気づいているので、魔法の講義を切り上げる。
夕食後も講義を少しするが、おそらく解毒魔法の修得は明日になるだろう。
程なくして呼びに来た侍女にアイリスが応対している中、フォルトゥナから水瓶を受け取りつつ、ヒヅキはそう予想する。
その後は食堂に場所を移して夕食を摂ってから、再度部屋に戻ってきて魔法講義を再開させる。
夕食の時にシロッカスがエイン達との話し合いについて話したが、どうやら明後日からやって来るらしかった。明日解毒魔法を修得したとしても、間に合わないだろう。




