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会話

 何処どこを向いても暗闇しかない、何処かもしれないその場所で、誰かが不満げな声を出した。

「何か俺に言いたげだね?」

 声の感じからして男だと思われるその声の主は、真っ暗な空間に居る別の誰かに向けてそう問い掛ける。

「………………」

 問い掛けられた何者かはそれに何も答えを返さなかったが、それでも問い掛けた人物は相手が何を言わんとしているのか理解したようであった。

「それじゃあの時どうしたらよかったんだい?不満があるならあの時君が動けば良かったじゃないか」

「………………」

 相変わらず何も言葉を発しない相手ではあったが、それでも何故だか語りかけた人物には、相手が何を言わんとしているのかしっかりと理解出来ているようであった。

「その選択の結末には、俺らの終わりも含まれていると思うんだが………?」

「………………」

「それは御免だね。せっかくの機会なんだし、俺には俺のやりたいことがあるんだよ」

「………………」

「ああ、もちろん勝手にさせてもらうさ」

「………………」

「そうかい、その時はご自由に!」

 そこで僅かな間沈黙が訪れる。

「それで?実際のところ、アンタは一体何者なんだい?こんなかじゃそんなでもない俺でも理解出来るぜ、アンタだけ他と次元が違い過ぎていることがよ」

 男のその問いには、今度は本当の沈黙が返って来る。

「そうかい、黙りかい。まぁ言いたくないならいいけどさ。しかし、アンタならあの生意気な奴と対等以上に渡り合えると思うんだけど、どうなんだい?」

「………………」

「というか、あの生意気な奴は気に入らねぇな。しかし、俺らについて何か知ってそうな雰囲気だったな」

「………………」

「まぁアンタも同じく……いや、もしかしたらアイツ以上に詳しく知ってそうだけどさ、喋ってはくれないんだろう?」

 その問いの答えに返ってきた沈黙に、話のついでに問い掛けただけのその人物は小さく笑った。

「まぁいいさ、いつか分かるだろうからさ。その為にも、ますます彼には生きていてもらわなくてはならないけどな」

「………………」

「というか、もう少し明るくいこうぜ!こんな場所だからって、みんな暗すぎだっての」

 そこまで言うと、その誰かは辺りを窺うような間を少しだけ空ける。

「一応確認するが、あの移動はアンタの力だろ?」

「………………」

「いやはや、実に魔法は万能だ………な訳ないことぐらい、俺でも知ってるさ」

「………………」

「いや、アンタの言うように魔法自体は万能であるのは知ってるさ。俺が言いたいのは、どんなに頑張ったところで術者本人には限界があるってことさ」

「………………」

「だからこそ、彼のあれは分不相応だと思ってね。いくら俺らが力を貸したとしても、肉体や素質ってやつにも限度ってもんがある。そして、あれはそれを越えている。……一体全体アンタはどんな裏技を使ってるんだい?」

 探るような男の声音の中に、苛立ちからか、隠しきれない険が混じる。

「………………」

「そう、素直に喋る気はないと………」

 男は不穏な空気を放つが、それは一瞬のことで、直ぐにそれを引っ込める。

「まぁいいさ、俺じゃどんなに頑張ってもアンタにゃ及ばないし」

 おどけるようにそう言うと、その誰かは早々に手を引いて、他の誰かに声を掛ける。

「それで?そっちのアンタは一体何をしてるんだい?」

 男の問いに答えは返ってこなかったが、それでも男は察したらしく、少し愉快そうな声音に変わる。

「それは便利だねぇ。実に素晴らしい使い方だよ。後で俺にも教えて欲しいぐらいだよ」

 そう言うと、その誰かは他の誰かが眺めているものを横から覗きこみ、そして愉しそうに笑ったのだった。

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