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再会106

 というよりも、書き手が変わっている事を隠す気が無いようにヒヅキには感じられた。

 別に筆跡が違うという訳ではない。詳しく見ていけば判別出来るのだろうが、少し見ただけではまず不可能なほどに似ている。同じ人物が書いたと言っても過言ではない。

(もしくは書いたのは、本当にプリスさんなのかもしれないが)

 筆跡は問題ないのだが、問題は内容の方。とはいえ、露骨に違う訳ではない。むしろやや巧妙で、読み進めていく内に徐々に文体が変化していくので、あまり違和感は覚えないほど。それも大きな変化ではないので、普通は気づかないだろう。

 ヒヅキが気づいたのは、プリスと途中から書いたであろう人物を知っているから。勿論その人物とは――。

(エインさんは相変わらず悪戯好きという事だろうか?)

 もう一人の書き手であるエインの性格を思い出したヒヅキは、内心で呆れながら手紙を読み終える。

 手紙の最後には、使者が訪れた翌日に伺う旨が書かれていたので、ヒヅキは使者の女性に「分かりましたとお伝えください」 とだけ言葉を残す。

「確かに伝えます」

 それに対して女性は堅苦しい礼を行う。

 その格式ばったような応対に、まるで正式な使者のようだと内心で苦笑するが、この訪問はあくまでも私的なもの。というよりも、エインもプリスももうただの人に近い身分のはずなので、本来はもっと気楽に訪ねてくるもののはずで。

(まぁ、仕事が忙しいと書いてはあったが)

 ここで手紙に公務と書いていない辺り、本当に今までの身分を辞したのだろう。そう理解し、ヒヅキは頭痛を感じそうな気分になる。

 そこまで本気で準備している者に、少し旅しただけで、さぁ約束は守ったから帰れとは非常に言い難い。それに、おそらくその程度では帰ってはくれないだろう。というより、その程度で帰るぐらいであれば、ヒヅキはここまで苦労はしない。

 その後、確認と調整の為にヒヅキと女性は少し言葉を交わして、来訪は終わる。

 女性が帰ったのが、夕方少し前。ヒヅキはそんな時間に一人で帰してしまって大丈夫かと僅かに思ったものの、プリスの部下なのだからその辺りは問題ないだろう。そう思い直し、見送ったのだった。

 ヒヅキは女性を見送った後にフォルトゥナ達のところに戻る。

 二人は変わらず解毒魔法の講義を行っていたが、ヒヅキが離れている間に進展があったようで、離れる前よりは様になっていた。

 とはいえ、まだ解毒魔法は完成していないようで、講義は続きそうだ。と思った時に侍女が夕食に呼びにやって来るのをヒヅキは捉える。

 それは当然フォルトゥナもで、侍女が扉を叩く前に講義を中断させて、アイリスに魔力水を飲ませた。

 程なくして扉を叩いた侍女にアイリスが応対している内に、ヒヅキはフォルトゥナに預けていた水瓶を返してもらう。

 それを空間収納に仕舞うと、三人は侍女の案内で食堂に移動した。

 食堂でシロッカスも交えて夕食を摂る。

 それを終えると、三人は戻って魔法講義を再開させる。しかし、夕食後の夜の部はそこまで長い時間は取れないので、夜の部は特に進展もなく終了した。

 そして5日目。こちらも予定通りにはいかないが、それは解毒魔法を始める前の予定通りではある。それにもうすぐ解毒魔法を修得できそうな気配もしている。

 しかし、昨日の来訪者が持ってきた手紙に書かれていた内容通りであれば、本日はエインとプリスがやって来る日。今日もヒヅキは魔法の講義の途中で抜ける事になるだろう。

 もうすぐ解毒魔法が完成しそうなのでその事を残念に思うも、こればかりはしょうがない。

 エイン達が来る事を前夜にフォルトゥナに伝えところ、もの凄く悔しそうな表情を浮かべていた。フォルトゥナの目標はエイン達が来る前にガーデンを発つ事だったのだから、それもしょうがない事だったのかもしれないが。

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