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再会104

 それぞれが保有している魔力量は先天的に決まっていて、後天的に延ばす事はほぼ不可能と言われている。

 幼子から大人に成長しても、増加する魔力量は僅か。中にはそこそこ伸びる者も居るが、それでも許容範囲内ぐらい。

 だからこそ、少しでも保有する魔力量を増やせる可能性が在るという魔力水は、かなり貴重な水という事になる。しかし、ヒヅキはそんな話は聞いたことがない。

 フォルトゥナの話では、エルフにとっては一般的であったようなので、本当に魔力量が増えるのであれば、人間にも知れ渡っていてもおかしくはない。少なくとも、知識を集めていたヒヅキの耳に入っている可能性は高いはずであった。

 それでも実際には人間の世界では噂も聞いていないし、勿論ヒヅキの耳にも入っていない。であれば、実は魔力量が増える事は無いか、稀なのだろう。もしくはエルフが秘匿している可能性も在る。

(いや、フォルトゥナは一般的らしい事を言っていたか)

 フォルトゥナがヒヅキに嘘を吐くとは考えにくいので、秘匿している可能性は低いだろうし、フォルトゥナが魔力量が増えると言っていたので、それに気づいていないという事は無いだろう。

 それらを吟味すると、魔力量が増える可能性がかなり低いという事が考えられる。

(……もしくは、単に魔力が視えない人間には水にしか見えないからという可能性もあるか。フォルトゥナも最初はこれを水としか言ってなかったし、エルフにとってはこれもただの水で、特段語るほどのものでもないから、とかな。まぁ別にそれでも問題ないのだが)

 どの様な理由があったとしても、魔力が回復するだけでも十分過ぎる効果だろう。

 ヒヅキはたまにアイリスの容器に魔力水を注ぎながら、離れたところで二人を観察する、

 それは夕食に呼びに来た侍女と共に食堂に移動するまで続いた。

 夕食を終えると、ヒヅキとフォルトゥナは部屋に戻る。アイリスはまだ講義を続けたがったが、明日の予定を伝えて今日の魔法講義は終わりという事になった。

 ヒヅキ達は部屋で入浴の準備をすると、いつも通りに窓際に置いている椅子に腰掛ける。

 開けた窓から入ってくる外気は急に冷たくなった気がするも、まだ寒いというほどではない。

『それで、今日の成果はどんな感じ?』

 窓の外に顔を向けながら、隣に腰掛けるフォルトゥナに問い掛ける。

『やはり魔力水があると魔力切れの心配が無いので、結構な進展が見られたと存じます』

『そっか。あとどれぐらい掛かりそう?』

『今の調子でいきましたら、水を出すだけでしたら明日にでも。治癒と解毒も考えますと、少なくとも後7日は欲しいです』

『なるほど……そうだね。じゃあ、水の創造に追加で治癒か解毒の片方だけなら?』

『それでしたら、水を出すまでの期間と合わせまして、治癒でしたら後3日。解毒でしたら後5日は欲しいです』

『ふむ。それは治癒の方が簡単という事?』

『いえ。あの娘の適性的に治癒の方が僅かに合っているようです』

『そうか……ふむ。じゃあ、両方お願い。あまり効果がなくとも、必要な時が来るかもしれないからね』

『畏まりました』

『しかし、後7日か。早いけれど、微妙な時間だな』

『……申し訳ありません』

 ヒヅキの呟きに謝罪するフォルトゥナ。

 そちらに目を向けたヒヅキは、少し考えフォルトゥナの勘違いを正す。

『むしろ、後7日で一般人に魔法を3つも覚えさせられるフォルトゥナは凄いからね。アイリスさんには才能があるのかもしれないけれど、それでも凄いよ。だから、今のは別に怒ってる訳でも、不機嫌になった訳でもないから。勿論、不満な訳でもないから勘違いしないように。ただ現状を確認しただけだから』

 言い聞かせるように、区切りながらはっきりと告げるヒヅキ。

『はい。ありがとうございます』

 それに頭を下げるフォルトゥナだが、本当に分かっているのかは微妙なところ。それでもヒヅキは、伝えるべきことは伝えたと、視線を窓の外に戻す。

 それからは侍女が風呂の用意が整った事を告げに来るまで、ヒヅキは黙したまま窓の外を眺め続けた。

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