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再会101

 シロッカス邸には、夕方の内に到着した。

 荷物を下ろすと、窓を開ける。まだ温かい風が頬を撫でるも、それも日に日に冷たくなってきている。それでも日中は何もしていなくとも汗が滲むほどだが。

 そんな風を浴びながら椅子に腰掛けて水を飲んだところで、扉を叩く音が響く。

 誰かは分かっているが、ヒヅキは扉に近づき、一応誰何の声を掛けた。

「何方でしょうか?」

「アイリスです。お疲れのところすみません。お願いしたい事がありまして」

 扉越しのアイリスの言葉を聞いて、ヒヅキは扉を開けてアイリスを部屋の中に案内する。

 軽く礼をして入ってきたアイリスは、部屋の中に視線を巡らせてから、フォルトゥナのところで視線を固定させた。

「それで、どのような御用件で?」

 ヒヅキが問い掛けると、アイリスはヒヅキの方に顔を向けた後に、フォルトゥナへと視線を戻す。

「はい。あの、まだ夕食までは少し時間がありますので、魔法の講義をお願い出来ないかと思いまして……」

 不安そうにアイリスがフォルトゥナにそう提案すると、フォルトゥナはヒヅキの方に目を向ける。

『フォルトゥナが決めていいよ』

 それに遠話でそう応えると、フォルトゥナは小さく頷いてアイリスに目を動かした。

「構わない。それじゃあ時間もないからここで始める」

「はい!」

 嬉しそうに笑うと、元気よく頷くアイリス。その様子を見たヒヅキは、午前の講義の最後に魔力水で魔力を回復したから居ても立っても居られなかったのかもしれないと考えた。

 そのまま椅子を動かして二人は向かい合わせに座ると、早速魔法の講義を始める。

 ヒヅキはその間、魔力水の準備だけして窓際に立って外を眺める。アイリスの分の容器は、備え付けの物を使用した。

 日が暮れ始めた薄暗い街中を眺めながら、ヒヅキはヒヅキで感知魔法の訓練を行っていく。

 中々思うように感知範囲が拡がってはくれないが、それでも成果がない訳ではない。とりあえず、今は直径10メートル程度の円形の範囲でなら、感知が出来るようになってきていた。

 それでも遅い成長に、ヒヅキは内心で辟易する。特に最近はそう感じるのは、急激に成長しているアイリスを間近に見ているからかもしれない。

 その事に気がついたヒヅキは、自分も存外影響されやすいものだと内心で苦笑する。

 確かに感知魔法はかなり重要な魔法だし、生死に直結しかねない場合も在るほどだ。ただヒヅキの場合、優れた感知魔法の使い手であるフォルトゥナが同行して常に周囲を警戒しているので、必ずしも急を要する訳ではなかった。それに、最悪ウィンディーネという反則級の存在に頼る手段もある。

 もっとも、ヒヅキはそんな事でウィンディーネに頼るぐらいであれば、死んだ方がマシだと考えるだろうが。

 とにかくそういう訳で、急ぎ過ぎる必要はない。今までもそれで何とかなってきた訳だし、別に索敵の手段がない訳でもないのだから。

 ヒヅキは自分にそう言い聞かせると、感知魔法の訓練を再開する。しかし、考えている内に日が暮れる直前になっていたようで、侍女が夕食の準備が整った事を告げにやって来たのを感知する。

 それはフォルトゥナも同様で、アイリスへの魔法講義を中断すると、アイリスに魔力水の残りを飲ませて、扉の方に目を向けた。

 アイリスだけがよく分からず僅かに小首を傾げたところで、コンコンと軽く扉を叩く音が室内に響く。

 窓を閉めて扉の方にゆっくりと向かっていたヒヅキがそれに応対した後、アイリスの存在に気づいて少し驚いていた侍女の案内で、三人は食堂へと移動する。

 食堂でシロッカスと挨拶を交わした後、それぞれの席へと腰掛ける。

 直ぐに並んだ夕食に、食前の祈りを捧げた後に手を付けていく。

 それから和やかに夕食を終えると、ヒヅキはアイリスに明日の予定を伝えて、フォルトゥナと共に部屋に戻った。

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