再会98
魔力水で魔力が回復したアイリスに、フォルトゥナは魔法講義を再開させる。
先ほどまでと同じ指導を再開させたフォルトゥナと、その指導を受けるアイリス。
ヒヅキはその様子を眺めながら、アイリスを観察する。
(見た感じ異常はない、か? 急速な回復による反動みたいなものはないようだし、魔力回復には最適だな)
魔力水を飲む前と変わらぬアイリス様子に、ヒヅキは観察を続けながらも、魔力水の有用性にひとつ頷く。ヒヅキの行使する魔法は魔力消費量が多いために、手軽で急速な魔力回復手段はかなり貴重であった。
かつて魔力が枯渇した時のことを思えば、それの重要性は嫌でもわかる。あとはどうやって緊急時に魔力水を摂取できるようにするかだが。
(戦闘中にいちいち水瓶を取り出している暇はないだろうし、何処か別に保管するにしても、直ぐに飲めるようにしなければな。それとは別に、あの水瓶以外で保管しても効力が持続されるのかも気になるな)
二人の講義の風景を眺めながら、ヒヅキは魔力水の活用法について考えていく。
ヒヅキは魔砲を習得したとはいえ、魔砲は消費魔力量がかなり多いので、基本は光の剣での戦闘を行うことになる。そうなると、必然的に近接戦が主となるので、その時に魔力切れを起こした場合は、魔力回復を行う暇さえなくなってしまう。
勿論そうならないように管理するのも大事だし、もしもの時は退くことも重要だ。しかし、何があるかわからないのがこの世の中というもの。それに魔砲ほどではないが、光の剣も消費魔力量が多い魔法だ。
魔力操作が神域にまで達しているヒヅキではあるが、保有魔力量に関しては普通の人間よりは多いぐらい。冒険者と比べても平均以上ではあっても、突出しているわけではなく、ヒヅキよりも保有魔力量が多い冒険者も珍しくはない。
それこそ保有魔力量のみでみれば、シラユリやサファイアの方がヒヅキなんかよりも余程多いほど。ただ、魔力操作の実力に圧倒的な差が在る為に、たとえ同じ魔法を使ったとしても、威力も使用魔力量も何もかもが違いすぎて、比べるのも馬鹿らしくなるほどの結果が出るだけ。
そんなヒヅキだからこそ、魔砲や光の剣を扱えているだけで、本来は人間が扱えるような魔法ではない。それぐらいの魔法なので、突然魔力切れを起こす可能性も大いにあり得る。
そういう訳で、ヒヅキはかなり真面目に魔力水の摂取方法について思案する。戦闘方法が接近戦なうえに、ヒヅキの戦闘は基本的に高速戦。その状態で魔力水を飲むというのはなかなかに難しいのは、容易に想像がつく。
(何かに包んでそれごと飲み込むというのが確実だと思うが、何に包み込めばいいんだ? 保管場所は空間収納を使えば、戦闘中でも問題なく出し入れが可能だと思うが、あとは何に包むか、だ。飲み込めるものでなければならないからな。まぁそれ以前に、保管についてと摂取量に関して調べていかないといけないが)
摂取量に関してはそこまで多くなくても大丈夫だろうが、ヒヅキの魔力量で枯渇気味から全快になるまでが理想なので、そこは確実ではない。保有魔力量が異なるので、アイリスのように少量で十分とは限らないからだ。
(……ふむ。明日から俺は時間が出来るから、そこで調べてみるとするか。保存に関しては今日からやればいいだろうし)
ヒヅキの明日からの予定が決まったところで、侍女が近づいてくるのを感知して扉の方に目を向ける。
程なくして、控えめに扉を叩く音が響いた。
それにアイリスが返事したものの、あまり顔色がよくない。
魔力が減った影響だろうと考えたヒヅキは、アイリスが扉に近づく前に、魔力水を注いだ容器をアイリスに差し出す。
「ありがとうございます」
礼を言ってヒヅキからそれを受け取ったアイリスは、扉を開く前に魔力水を一気に飲み干したのだった、




