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再会96

『魔力水は、そのまま魔力の溶け込んだ水という意味ですが、普通の水でも微量ながらに魔力は溶け込んでいます。しかし、ここで言う魔力水とは、その溶け込んだ魔力量が一定以上の水ですが、これは自然界では珍しいので、ヒヅキ様がご存じないのも当然かと。それに、魔力を視る事が出来る者でなければ、見分けるのは困難ですから』

『まぁ、それはそうだね。自然界にはって事は、人工的に作っているの?』

『はい。森の中では比較的流通しておりました』

『森の中って事は、森人もか』

『はい。僅かですが人魚にも流通しておりましたが、基本はエルフと森人の間でですね』

『へぇ。……という事は、魔力水は森人が作っていたの?』

『はい。エルフでも作ってはいましたが、森人製の魔力水は高品質ですので』

 森人というのは、エルフ国の南側の領地に入り込むようにして領地を持つ小国の住民達で、他に妖精とも精霊とも呼ばれている者達。

 見た目は、薄く透き通る様な羽が生えた人間。羽の形は蝶の羽に似ているが、一番の特徴はその身長だろう。森人の大人の身長は、大体20センチメートル前後。

 外見は美麗なエルフと違い、男女ともに幼い、もとい可愛らしい姿をしている。

 数は結構居るのだが、その小柄さ故に、ガーデンより少し広いぐらいの小国でも、やや広く感じるほど。

 そんな森人は、エルフ同様に魔力を視ることが出来る数少ない種族で、魔力の扱いが非常に巧み。

 エルフと比べると、エルフは魔力の扱いが得意なのに対して、森人は魔法の扱いを得意としていて、総じて強力な魔法の使い手でもあった。

 なので戦力面で見れば、小さくとも一人一人が砲台である以上、弱いはずがない。

 とはいえ、森人は穏やかな性格をしていて争いを好まないので、争わずに誠実に対するのであれば、とても付き合いやすい種族でもあった。ただ、悪意には敏感なので、騙そうとするなど悪意を持って近づくと、最悪殺されかねない残忍性も持ち合わせている。

 そういった特徴を持つ森人が魔力水の供給元だという事は、魔力水を作るには魔法が必要なのだろう。

『なるほど。魔力水を作るには高度な魔法が?』

『高度というほどではありませんが、魔力と水を閉じ込める必要がありますので』

『フォルトゥナは作れるの?』

『質はあまりよくはないですが』

『そっか。フォルトゥナは何でもできるんだな』

『そんな事は……ただ色々な事に手を伸ばしただけの器用貧乏です』

『頼りになるよ。しかし魔力水、ね。これがそんな上等なモノだったとは』

 水瓶を持ち上げて眺めながら、ヒヅキは僅かに驚きとも感心ともつかない声を出す。

『という事は、これを飲み続けていれば、アイリスさんでも魔力量が増えるという事?』

『可能性はあります。しかし、増えるといいましても、そう多くはありません』

『そうなんだ。どれぐらいで効果が出るの?』

『個人差がありますのでなんとも。ただ、一度増えた魔力は水を飲まなくなっても減る事はありません』

『なるほどね。じゃあ、この水瓶の実験で使った大甕に満たした水を使うなら、可能性は在るのか』

『はい』

『ふぅん。それで、補充が出来るという事は、魔力を使い過ぎてもこれで回復出来るという事?』

『そうです』

『なるほど。なら、アイリスさんへの魔法講座で使ってもよかったのに』

『よろしいのですか?』

『いいよ。大量にある訳だし』

『では、そのように』

『それで、これを使って魔法講義を1日中すれば、どれぐらいでアイリスさんは魔法を修得できると思う?』

『魔力の回復手段が在るのでしたら、滞在中全日魔法の習得に当てたとしまして、遅くとも数日中には可能かと』

『ふむ。ならそれで行こうか。時間もそんなにある訳ではないからね』

『畏まりました』

 恭しく頭を下げたフォルトゥナを眺めながら、ヒヅキはアイリスさんも忙しくなるなと、他人事の様に思うのだった。

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