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再会95

 翌日もヒヅキは早くに目を覚ます。

 周囲の様子を確認した後に外に目を向ければ、まだ暗いまま。

 いつもの様に周囲の様子の感知を行い時間を潰す。

(それにしても)

 ごくごく狭い範囲ながらも感知が出来るようになった事で、ヒヅキもウィンディーネの位置がはっきりと判るようになった。ウィンディーネが近くに居る時だけだが。

(こんな感じなんだな。フォルトゥナもこんな感じで視えているのかな?)

 感知で捉えているウィンディーネは小さな球状の姿をしており、そこだけ空間に真っ黒な染みの様なモノが出来ている。

 それは不気味というよりも、得体のしれない不安を煽るような、心が潰れそうな黒。

 ただ黒い染みが虚空に浮いているだけなのだが、まるで周囲の景色を吸い込んでいる様にも見える。

 およそ神々しさとは対極に在りそうなそれは、ウィンディーネに相応しい様にヒヅキには思えた。

 そんな根源的な恐怖を覚えそうな黒点だが、ヒヅキはそう感じて何故だか笑みが溢れそうになる。

 それが表に出る事はないが、僅かだか気分がよくなった。

 だが同時に、細やかながら感じた暗い愉悦を思い、何をしても届かない相手だけに、これぐらいしか出来ないというのが情けなくもあった。

 そっと息を吐き出したヒヅキは、気だるげに窓の方に目を向ける。

「……そろそろかな?」

 気がつけば明るくなり始めていた外の様子に、ヒヅキはフォルトゥナを起こす。

 目を覚ましたフォルトゥナと朝の挨拶を交わした後、起きて着替えなどの朝の支度を済ませる。

 その後に窓を開けて、窓際の椅子に腰掛けて外を眺める。まだ外気は冷たく、空はやや雲量が多い。

 それでも雨が降るほどではないように思えた。

 プリス邸を訪れるのも今回が最後の予定の為、雨が降るのであれば明日にしてくれとヒヅキは思いつつ、水瓶から注いだ水を飲む。

「………………ふむ。しかし、この水は本当に何なんだろうな?」

 容器に注いでいる水に目を向けたまま、ヒヅキはぽつりとそう零した。飲める水ではあるが、やはり少し気にはなる。

 そのヒヅキの呟きを耳にしたフォルトゥナは、不思議そうに首を傾げた。

 ヒヅキが視線を横に動かすと、フォルトゥナと目が合う。その目は何を言っているのだろうと考えている様にも見え、ヒヅキは問い掛ける。

『フォルトゥナはこの水の正体を知っているの?』

 何となくフォルトゥナは知っているのだろうと思え、ヒヅキがそう尋ねると、フォルトゥナは少し考え首を横に振った。

『申し訳ありません。それが魔力を含んだ水という事しか分かりません』

『魔力を含んだ水?』

 フォルトゥナの言葉に、ヒヅキは容器に残っている水に目を戻す。

 そこには透明度の高い水が容器の中で揺れているだけで、魔力がどうこうは視えないヒヅキにはよく分からない。

『はい。この水には魔力が溶け込んでいるようで、飲むと体内の魔力を補充したり、活性化したりするようです。これ程までに質のいい魔力水はそうないでしょう』

『へ、へぇ。そうなんだ。飲んでも問題ないの?』

『問題は在りません。むしろ体内を活性化させるので、健康にはいいと存じます。それにこれだけ質が高いと、魔力の少ない者でも、これを毎日飲み続けるだけで少しは魔力量が増やせるかもしれません。飲み過ぎても不要な分の魔力は放出されるだけですので、そちらも問題はありません。普通の水よりも良い水だと考えて頂ければよろしいかと』

 フォルトゥナの説明に驚きつつも、ヒヅキは頷きながら真剣に聞く。ヒヅキにとっては初耳の内容だし、水の正体を知るには重要な事だろう。いや、ほとんど答えの様なモノか。

『しかし、魔力水? 初めて聞く名称だ』

 それとは別に、初めて聞いた名称についてヒヅキはフォルトゥナに問い掛けた。

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