再会92
「そうですか。やはりろくでもない神ですね。それで、それはウィンディーネも同様で?」
ウィンディーネの上からの憐れみを歯牙にもかけずに、ヒヅキは白けた目でウィンディーネを見詰める。
「さぁ? どうなのかしらね。評価は自分ではなく他人がするモノでしょう? ヒヅキはどう思うのかしら?」
楽しそうに問い掛けるウィンディーネ。しかしそこには、隠す気も無い嫌らしい愉悦のような響きを乗せている。
「そうですね。個人的な意見ではありますが、理不尽で邪魔な神かと」
「そう。ヒヅキが変わらなくて私は嬉しいわ」
無邪気とも取れる笑みを浮かべたウィンディーネに、ヒヅキは胡散臭そうな目を向けながら少し顔を引く。
「ふふ。やはりたまにはこうしてヒヅキと話をしないとつまらないわね」
「こちらは勘弁願いたいですが」
「ふふ。駄目よ。私がそうしたいのだから」
「………………はぁ」
終始楽しそうなウィンディーネに、ヒヅキはこれ見よがしにため息を吐いてみせる。
「ほら、ヒヅキも言ったでしょう? 私は理不尽な神なのよ」
得意げに胸を反らしたウィンディーネに、ヒヅキは頭痛でも堪えるかのようにこめかみ辺りを押さえた。
「ふふ。もっと語っていたいけれど、楽しい時間はあっという間に過ぎていくものね」
部屋に近づいてくる侍女の気配に、ウィンディーネは楽しそうに笑うと一瞬で姿を消した。
それを見届けたヒヅキは、確かに理不尽の塊ような存在だと改めて認識すると同時に、面倒な相手だとげんなりとする。あれをどうにかしなければ、今後も苦労するのは確実だ。
ヒヅキがため息を吐いたところで、扉が叩かれる。
扉を開くと、夕食に呼びに来た侍女に案内されて二人は食堂へと移動を開始する。
先に来ていたシロッカスとアイリスに挨拶をしてから、引かれた椅子に腰掛けて、用意された夕食を食べていく。
ヒヅキ達は温かな夕食を食べ終えると、部屋に戻る。
部屋では風呂の準備を行い、窓を開けてから窓際の椅子に腰掛けた。
開けた窓からは、まだやや温度の高い風が入ってくる。依然温度は高いらしい。しかし日も落ちたので、それも直に涼しくなってくる。
風呂から上がった頃には風も涼しくなっているだろうと思いつつ、椅子に深く腰掛けながら、ヒヅキは窓の外に目を向けた。
『明日もまたプリスさんの家に向かうから』
『畏まりました』
ヒヅキが明日の予定をフォルトゥナに告げると、フォルトゥナはすぐさま了承したと言葉を返す。
『……ま、明日居なければ諦めるよ』
『それが宜しいかと』
『アイリスさんの方はどう?』
『順調ではありますが、魔法の修得には今しばらく掛かります』
『そう。なら、明後日はまた1日講義に当てようか』
『畏まりました。それでしたら、魔法修得もかなり早まるかと』
『そっか。ならよろしく。アイリスさんが魔法を1つは修得出来たら、先に進もうと思うからさ』
『畏まりました』
今後の予定を簡単に話した後、ヒヅキはガーデンを出た後について考える。
ガーデンを出た後は、ウィンディーネと出遭った森の先に在る遺跡を目指す。近くに廃村が在るも、人は居ないので目撃情報は期待できないだろうから、今回は無視でいいだろう。
山の中に在るその遺跡に到着したら、探し人が眠っていたと思われる棺を再度調査する。一度調べたが、その時は消耗が激しかったので見落としがあるかもしれない。
(何か手掛かりがあればいいが)
そう思うも、こちらも期待はできないだろう。とはいえ、他にその後の足取りについて調べる方法が無いのだが。
「………………」
時間が経ち過ぎた足取りを調べる魔法は無いとフォルトゥナが言っていたので、そちらの方面での期待は出来ない。後は遺跡の先を調べてみるしかないだろう。




