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再会87

(まぁ、プリスさんがここに居る訳ないよな。気配も別人だし)

 その侍女が似ている人物を思い出し、ヒヅキは密かに苦笑する。

 侍女とプリスは、全体的な感じも似ているのだが、醸す雰囲気もどこか似ていた。しかし、侍女の方はプリスの様に明確に相手と壁を作っているような、拒絶的な雰囲気は持ち合わせていなかった。それどころか、相手を優しく包み込むような雰囲気を持ち合わせている。

 なので、見た目はまだしも明らかに別人。そんな相手をどうして一瞬とはいえ見間違えたのだろうかと、ヒヅキは内心で不思議そうに首を傾げた。

 それからヒヅキ達三人は侍女に先導されて食堂に移動する。

 食堂でシロッカスと挨拶を交わした後、ヒヅキは出された夕食に舌鼓を打った。

 夕食後も魔法の講義を望んだアイリスであったが、魔力量の低下を理由にそれはフォルトゥナに却下された。

 その際、アイリスは明日の為に魔力量回復をフォルトゥナに言付けられていた。つまりは魔法の練習を勝手にするなということ。

 アイリスはそれを了承すると、丁寧に頭を下げて自室に戻っていった。

 それを見届けた後、ヒヅキとフォルトゥナも部屋に戻る。

 部屋まで案内した侍女が去った後、ヒヅキは風呂の用意を済ませてから窓際の椅子に腰掛け一息吐く。

『お疲れさま』

 ヒヅキが一日中アイリスへと魔法講義をしていたフォルトゥナを労うと、ヒヅキの隣の椅子に腰掛けたフォルトゥナはとろんと目尻を下げて幸せそうに微笑む。

『いえ! あの程度問題ありません!!』

 張り切っているような気合いの入った返事に、ヒヅキは少し顔を逸らす。

 遠話なので別に耳で聞いている訳ではないのだが、予想外な場面での急な大きな声に思わずといった感じであった。

『そう。でも助かったよ。私では魔法は教えられないからね』

 ヒヅキは魔法は使えても教えることは出来ない。それは単純に理解していないから。

 もっとも、ヒヅキは突然魔法を修得させられただけなのだからしょうがない。ついでに言うのであれば、ヒヅキはどちらかといえば理論派ではなく感覚派だったりする。本人に自覚はないが。まぁ、どちらかというと程度でしかないので、それにあまり意味はない。

『ヒヅキ様でしたら、直ぐに魔法を教えられるようになります!』

 確信を持った声音に、ヒヅキは小さく笑う。

 それは苦笑ではなかったが、温かなモノでもなかった。どちらかといえば皮肉とも自嘲とも取れるような奇妙な笑み。もしくはただ口の端を持ち上げただけなのかもしれない。

『だといいね。さて、明日からまた午後からは街に出る予定だ』

『はい』

『アイリスさんの習熟具合はどう?』

『今日で大分進みましたが、まだ一人で魔法を使えるほどではありません』

『ふむ。まぁ、1日2日でどうにかなるとも思っていないから、進んだのであれば十分か』

 せめて1つぐらいは魔法の修得が間に合って欲しいが、だからといって急かしてもそれで修得できるモノでもないので、進んでいるというだけで十分な収穫であった。

『明日はまた、この前の家を訪れる。それで戻ってくるだけだから、フォルトゥナは明日もアイリスさんへの講義を1日やっていてもいいよ?』

『いえ。ヒヅキ様とご一緒したいです!』

『そう。ならそうするか』

『はい!』

 特にこだわりも無いので、ヒヅキはフォルトゥナの申し出をそのまま受け入れる。希望は所詮希望でしかないという事。

 そこで侍女が近づいてくる気配を感じ、顔を扉の方に向ける。

『風呂の用意でも出来たのかな』

『おそらくは』

 ヒヅキの呟きにフォルトゥナが同意したところで、侍女が部屋の扉の前に到着する。その後で静かに扉を叩くと、予想通りに風呂の用意が済んだ事が告げられた。

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