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再会76

 夜が明けて朝になる。

 二人は眠ることなく街を彷徨っただけなのだが、暗いなか街を見て回ったおかげで色々と面白い物を目撃できた。

 しかし、二人には関係のない事ばかりなので、それについて語る必要も無い。

 とりあえず夜が明けたばかりなので、二人はもう少し街を回って時間を過ごす。

 ガーデン門が開くのが日が昇ってからなので、そこから入国する事を考えれば、シロッカス邸を訪ねるのは昼が少し過ぎた辺りがいいだろう。

 ヒヅキは天上に目を向けて時間を確認すると、前を向いて歩き出す。

 せっかくなので、そのままガーデナー城の方に足を向ける。プリスの邸が建つ区画からガーデナー城は見ることが出来るも、しかし距離がある上に城壁に阻まれて満足には見られない。

 それでも十分美しさは伝わるのだが、ガーデナー城をしっかりと見たいのであれば、正面から見るのが一番。他には何処かの建物の上か、侵入するしかないだろう。城内に招待されるのであれば別ではあるが。

 とりあえず二人はガーデナー城正門に向かってはいるが、ガーデナー城の正門に続く大通りは人通りが多い為に、近づくのは躊躇われた。なので、大通りから少し離れた場所で妥協する事にした。

 ヒヅキがフォルトゥナを連れて大通り近くまで移動した時には、そろそろ昼になろうかという時間。

 ガーデナー城は完全には見えないものの、それでもガーデナー城の新雪のような純粋な白と同じく眩いばかりの白の城壁は、遠目には境界が曖昧で、合わせて一つの建物の様に見える。

 その穢れを知らない白さは遠目にも美しいのだが、ヒヅキにはかつての感動は沸いてこなかった。ガーデンに一時期住んでいたので見慣れたというのもあるのだろうが、あの頃よりも心が変質してしまっているのが原因であろう。

 フォルトゥナの方はというと、ヒヅキの視線を追って一瞥しただけで興味が失せたのか、フードの奥の瞳はヒヅキの方に向けられている。

 その事に気がついたヒヅキは、小さく息を吐いてその場を離れる。時間的にもシロッカス邸に向かうには丁度よかったのもあった。

 二人は足早にガーデンの街を進む。

 ヒヅキはガーデンの全てを歩いた訳ではないが、それでもそれなりに探索している。中でも拠点としているシロッカス邸を中心とした周辺の道は詳しかった。

 なので、人通りを避けながらシロッカス邸を目指すのはお手の物。

 極力人を避けながら進んでいき、二人は昼を少し過ぎた辺りで無事にシロッカス邸に到着した。

 シロッカス邸の扉を叩くと、少しして侍女が扉を開いてヒヅキ達を家に招き入れる。

 ヒヅキが侍女に軽く挨拶をしてシロッカスが在宅か確認すると、不在だという答えが返ってきた。

 それに困ったように思案するも、侍女は続けてシロッカスからヒヅキ達が帰ってきたら部屋に案内するように言いつけられている旨を伝え、二人を部屋まで案内する。

 侍女はヒヅキ達を部屋まで案内すると、ヒヅキが帰ってきたことをアイリスに伝える事を告げた後に、思い出したように風呂に入るかどうかを尋ねる。

 それにヒヅキが入浴する事を伝えると、風呂の用意もする事を告げて去っていった。

 その背を少しの間見送ったヒヅキは、部屋に入り荷物を下ろす。

 フォルトゥナが外套を脱いでいる横で、ヒヅキは着替えを出して風呂の用意を行う。それにフォルトゥナも倣って、自分の背嚢から着替えを用意する。

 風呂の用意が二人共に整ったところで、控えめに扉が叩かれた。

「はい?」

 気配で誰かは把握しながらも、それにヒヅキが応えると、扉越しに儚げな少女の声が届く。

 その声を聞いて、ヒヅキは静かに扉を開く。

 開いた扉の先には、声の通りに繊細そうな儚げな見た目の少女が立っていた。

「お帰りなさいませヒヅキさん。ご無事で何よりですわ」

 そう言って安堵を籠めた笑みを浮かべた少女、アイリスにヒヅキも笑みを浮かべて応えると、話をしたそうな雰囲気のアイリスを部屋の中に招き入れた。

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