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再会75

 とりあえずその考えを横に措き、思考を切り替える。

『んー。まぁ、そこまで気になるのであれば、フォルトゥナだけ先にガーデンに入っていてもいいよ? 私はこのまま正面から入るから』

『それは……ヒヅキ様がそうなさるのであれば、私もこのまま列に並びます』

 ヒヅキの提案に、フォルトゥナは少し困った雰囲気を出しながら、ヒヅキと共に居る事を選ぶ。

「………………」

 顔を隠す為にやや俯かせているので、フードに隠れてフォルトゥナの表情までは判らないが、それでもヒヅキには寂しそうに見えた。

 だからという訳ではないが、ヒヅキはフォルトゥナの案について検討する。

 密入国した場合、当然ながら見つかればただでは済まない。しかし、普通に街中に居て見つかるかと問われれば、まず見つかる事はない。なぜならば、入国した全員の顔と名前を覚えている者など存在しないから。

 なので、密入国した場合は出国の際に見つかる事になる。ガーデンでは入国に際してそれを証明するような物は発行していないものの、入国の際に行われる審査で個人情報については訊かれているし、それは簡単な似顔絵と共にしっかりと記録されているので、出国の際にそれは照合される。

 この入国の際の情報は厳重に管理されているので、盗み出したり手を加えるのは難しい。それでいて探しやすいように綺麗に纏められているので、出国の際の照合はそこまで時間は掛からない。

 つまり密入国した場合、出国する際に誤魔化すのは困難という事。ただ、ヒヅキとフォルトゥナであれば、管理されている場所に侵入して手を加えるぐらいは出来るだろうが。

 とにかく、密入国した場合は、密出国する必要が出てくる。これに関しては二人は難なく可能なので大した問題ではない。問題は、エイン達とガーデンを出る時だ。

(エインさん達は密入国に関して何も言わないだろうが、出る時別々なのは少し悪い気がするな)

 そうヒヅキは考える。しかし、考えようによってはそれだけだとも言えた。つまり、躊躇するのはヒヅキの気持ち次第という部分がかなり大きい。

 実際のところは問題は在る。というよりも問題しかないが、ヒヅキとフォルトゥナにとっては何も問題にはならないのだから、関係ないことだ。

「………………」

 しばらく考えたヒヅキは、ひとつ息を吐きてフォルトゥナに語り掛ける。

『分かった。どこからか入ろうか』

『よろしいのですか?』

『ああ。問題ない。それよりもフォルトゥナの方が大事だろうからな』

『ヒヅキ様!!』

 何やら感動しているフォルトゥナを横目に、ヒヅキは片付けを始める。出している物も少ないので、最後に防水布を背嚢に仕舞うと、片付けは終わった。

 片付けを済ませると、二人は列を離れて道の外、草の中に入っていく。

 背の高い草で視界は悪いが、視界に頼らなければ何も問題は無い。足元は柔らかいがぬかるんでいるわけではないので、少し歩き難いぐらい。草も触れると危険な草ではないので、問題は無い。

 ヒヅキはガーデンを迂回するような軌道で進み、南門と西門の間ぐらいの城壁に近づく。

「………………」

 少し離れたところで足を止めたヒヅキは、草の合間から防壁に目を向ける。

 ガーデンの街は、出来た当初から戦う事を想定していないのか、真っすぐな防壁で四方を囲まれているだけで、実用性よりも見た目が重視されている。

 とはいえ、先のスキア襲撃以外では、実際に今まで戦火に晒された事は一度として無い。

 しかし、それ故に死角も多い。

 それに加えて、防壁上を巡回している兵士は一定の間隔で通り過ぎていく。

 兵士の巡回の間隔を見極めた二人は、夜陰に紛れて容易くガーデンへの侵入に成功する。

 ガーデンに密入国した事に対して二人は特に何も感想を抱くことなく、そのまま周囲の目を気にしながら街の中を進んでいき、夜を明かす場所を求めて闇に消えていった。

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