再会73
魔力を周囲に展開して、手近なモノの感知を行っていくヒヅキだが、その程度は今までも幾度も行っているので、それで直ぐに感知できるようにはならない。それでも、少しずつは進展があった。
「………………」
「………………」
二人共何も話すことなく森の中を進んでいく。
周囲を探知しながら、ヒヅキはスキアについて思案する。
以前シラユリ達との会話でも疑問に思ったことだが、スキアは何故、散発的に少数でソヴァルシオンに襲撃を掛けているのか。
ソヴァルシオンは、ガーデンを攻めるのであれば重要な拠点となるだろうが、他国を攻めるとなると少し距離がある。それ以前に、スキアにそういった拠点が必要とも思えない。
では他には何かと考えると、もしも神の暇つぶしや気まぐれでないのであれば、冒険者が邪魔なのかもしれない。もしくは今度はソヴァルシオンを潰しにかかっているとか。
そこまで考えて、ヒヅキは頭を振る。そうであれば、少数で散発的な襲撃などありえない。まだ冒険者達の実力を測る為という方がしっくりくる。実力とは何も戦闘能力だけを指すのではないのだから。
しかしそこまで考えると、再度何の為に? という疑問が浮かぶ。
仮に冒険者達の実力を測っているのだとして、それは何の為かと問われれば、カーディニア王国を今度こそ亡ぼす為としか思い浮かばない。
とはいえ、冒険者自体は他国にも居るので、わざわざカーディニア王国の冒険者の実力を測る必要もないだろう。別にカーディニア王国の冒険者が特別優秀だという話は聞かない。それとも、世界中の冒険者を一斉に調べているのだろうか。
(……その可能性もあったか)
そこまで考え、ヒヅキは今回の世界規模の襲撃に思い至る。冒険者の実力を測るのも、その一環なのかもしれない。
そこでまた、では何故かという疑問が生じるものの、これに関しては流石にヒヅキでも理解出来た。
(簡単な話だ。どれぐらい楽しめるのか知りたいのだろう)
そう考えれば、今回のスキアの襲撃もそういった意図があったのだろうと推測出来るも、所詮はよく知らない神の事。正しいかどうかは分からない。
それでもそういう事だろうと予想すると、ヒヅキはそのあまりにもくだらない理由にそっと息を吐いた。
日が暮れてもしばらく森の中を進むと、フォルトゥナに声を掛けてヒヅキは休憩をとる。
空には冷たい光で地上を照らす月が浮かんでいる。ヒヅキはその光から逃れるように木の影に腰を下ろす。
食べ物をフォルトゥナが。飲み水をヒヅキが分担して用意すると、それで夕食を摂った後に食休みをする。
「……ん?」
その間も訓練がてら引き続き周囲を調べていたヒヅキは、何か違和感を覚えて周囲を見渡す。
『どうかなさいましたか?』
『……いや、何でもない』
しかし、特におかしなところは見当たらなかった為に、気のせいかと意識を切り替える。いや、切り替えようとしたのだが、またも何かが引っ掛かり、再度周囲に目を向ける。
(………………気のせい? にしては、先程の妙な感覚はあまりに鮮明だった気がするが……ふむ?)
いくら周囲を見渡そうとも、気配を探ってみても何も無い。仮に何か在ったとしても、フォルトゥナが先に気がつく事だろう。
では何だと思い、自身の中にも意識を向ける。そうすると魔力の流れが鮮明に把握できるが、それでもおかしなところは見当たらない。それどころか、驚くほど無駄なく魔力はヒヅキの体内を循環している。
そんなことをヒヅキは知る由もないので、いつも通りと意識を切り替え首を捻る。周囲にも体内にもおかしなところは何も無かった。
なので、やはり気のせいだったのだろうかと考えたヒヅキは、一応気にしながらも探知の方に意識を集中させる。僅かずつではあるが、確実に歩みは進んでいた。




