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再会71

 程なくして、フォルトゥナは魔法道具作製に必要な道具を空間収納に仕舞うと、代わりに先程仕舞った紐を取り出し、纏めた枝の中央辺りを手慣れた様子で縛っていくと、余分な部分を魔法で出した水の刃で切る。

 そのまま枝の両端も同じように縛ると、フォルトゥナは残った紐をヒヅキに返した。

 最後に枝がしっかりと固定されているの確認してから、フォルトゥナは作業を終えて顔を上げる。

『完成しました!』

 そう言ってフォルトゥナが完成したばかりの魔法道具をヒヅキに差し出す。

『へぇ。こうやって作るんだね』

 フォルトゥナから魔法道具を受け取ったヒヅキは、それを眺めながら感心したように頷いた。

 そうしながら魔法道具を観察したヒヅキは、フォルトゥナの許可を貰って、試運転がてら魔法道具を起動させる。

『ふむ。確かに気流が生じているな』

 魔法道具に魔力を通すと、3本の枝の先端から魔力が噴出して僅かに周囲に気流が生まれる。範囲は狭いが、ごく少量の魔力で効率よく流れを作っているので、魔法道具としては優秀な部類に入るだろう。

 その出来に素直に驚いたヒヅキは、フォルトゥナの方に顔を向けてその腕を褒めた。

『凄いなフォルトゥナは。この魔法道具は中々に優秀じゃないか!』

『本当ですか!? ヒヅキ様からお褒めの言葉を頂けまして、これで今までの苦労が全て報われました!』

 そう言って、心底嬉しそうな笑みを浮かべるフォルトゥナ。

 手元の魔法道具に目を戻したヒヅキは、そこまでの苦労に思いを馳せ、小さく笑みを口元に浮かべる。

『これはフォルトゥナからアイリスさんに渡せばいいよ』

 ヒヅキは魔法道具をフォルトゥナに返すと、そう言って立ち上がる。

『さて、そろそろ休憩は終えるか』

『はい!』

 二人は手早く片付けを済ませると、歩みを再開させてガーデンを目指す。

 森の中のひやりとした涼しい空気を感じながら、足早に進んでいく。枝葉の間から差し込む光の強さが、現在が昼前である事を教えてくれる。

『……ん? 妙に静かだね』

 周囲を見回したヒヅキは、鳥の鳴き声さえ聞こえない森の様子に首を捻る。

『そうですね……この感じは近くにスキアが居る時に似ていますね』

『スキア、ね』

 ヒヅキは索敵範囲を拡げてみるも、スキアの存在は捕捉出来ない。

『近くには居ないようだけれど?』

『はい。どうやらソヴァルシオンという街にスキアが襲撃をかけているようです』

『………………ふむ』

 フォルトゥナの言葉に、ヒヅキはフォルトゥナの方に目を向けて少し考える。

『どうかなさいましたか?』

『いや……スキアがソヴァルシオンを襲っているんだね?』

『はい。襲撃しているスキアは二体のようです』

『なるほどね』

 頷いたヒヅキは、前を向いて思わず苦笑する。

 ヒヅキの索敵範囲では、現在地からソヴァルシオン方面へはショッリの森さえ越えられない。だというのに、フォルトゥナは簡単にソヴァルシオンの様子を探ってみせた。

 ヒヅキはそのあまりにも違う性能の差を改めて突きつけられて、苦笑しか浮かばなかったのだ。

(フォルトゥナのような神に愛された人物は、本来英雄と呼ばれるような存在なのだろうな)

 どこで何を間違えたのか、そんな規格外の存在であるはずのフォルトゥナが、今ではヒヅキの従者のような立ち位置に居る。言葉を飾らないのであれば、自らヒヅキの道具であることを望んでいる。

 そんな状況に、ヒヅキは苦笑を浮かべた後に、そっとため息を吐いた。そもそも、ヒヅキとフォルトゥナでは、あまりにも性能が違い過ぎるのだ。

 かつてウィンディーネが、単体相手ならばフォルトゥナが上、軍隊相手ならばヒヅキが上と評したが、それは一撃のみを比べた場合でしかない。

 フォルトゥナの能力である消滅は、対個人において最強の能力だ。神さえ滅せるその力は、複数に使った場合に一度に消滅させられる人数は十人前後。それもかなりの魔力を消費するので、膨大な魔力と巧みな魔力操作を併せ持つフォルトゥナでも、消滅魔法だけで戦った場合、数百人ほどしか相手に出来ない。

 それに比べてヒヅキの対個人向けの光の剣だが、一度に倒せるのは良くて五人前後。しかし射程がそこまで長くは無いので、普通は囲まれたとして一人から三人程度だろう。それでいて消費魔力が多いので、いつぞや限界まで戦った時よりも成長した今でも、光の剣を1日中振り回すことは出来ない。なので、戦える相手の数で比較すれば、光の剣とフォルトゥナの消滅魔法がほぼ同程度という事になる。

 しかし、ヒヅキにはもう1つ、魔砲という極大の破壊力と範囲を誇る魔法がある。それこそが、ウィンディーネがヒヅキを対軍隊に優れていると評した所以なのだから。

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