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再会70

 フォルトゥナは紐を空間に収納した後、枝を手に取り何やら念入りに確認をすると、おもむろにアーイスから譲り受けた道具を取り出す。

「………………」

 フォルトゥナは道具を手に枝の一本に意識を集中させると、道具の針の部分を枝に当てて動かしていく。

 枝の表面に線を引くように針を滑らせていくが、枝には傷1つ付いていない。それを不思議に思いつつ、ヒヅキはフォルトゥナの作業を眺め続ける。

 そうして3本の枝全てに同じように針を走らせると、フォルトゥナは顔を上げて一息吐く。

『今のは何をしていたの?』

 フォルトゥナが小休止したところで、ヒヅキが先程の作業について問い掛ける。

『魔力回路の開通をしていました』

『魔力回路の開通?』

『はい。この枝に限らず、全てのモノには元々魔力回路が備わっているのですが、それに魔力がしっかりと通るように道を拡げ、道と道を繋げていたのです』

『へぇ。それは凄い。フォルトゥナは外から魔力回路が視えるんだね』

 ヒヅキが魔力回路について把握するには、自身の魔力を魔力回路に通さなければならない。なので、道と道が繋がっていなければ、そもそも把握は不可能。

 しかしフォルトゥナは、それが出来るという。つまりは、外から魔力回路を把握する手段を有しているということになるが、ヒヅキはそれを魔力回路が視えるからだと推測しての発言であった。

『はい。集中する必要はありますが、視ることが出来ます』

 そして、ヒヅキのその推測をフォルトゥナが肯定する。

『そうなんだ。それは魔法道具を作る職人に向いているね』

『はい。しかし作るだけではなく、戦闘にも役に立つのですよ』

『ほぅ?』

『魔力回路が視えますので、魔法の発動の兆候を早い段階で察知できますし、その流れを阻害するだけで魔法は現出しなくなります。そもそも魔力回路を先に潰してしまえば、魔法は使えませんから』

『なるほど』

『そして、これは魔法道具にも適応できますので、戦闘でも役に立つのです』

『それは凄い。フォルトゥナはやはり強いんだね』

『ヒヅキ様ほどでは御座いません』

『はは。私よりもフォルトゥナの方が強いよ』

『そんなことは』

『あるよ。フォルトゥナはもう私よりも強い。それでいて優秀だ』

『……それでしたら、私のような者でもヒヅキ様の剣としてお役に立てそうですね! それだけではなく、盾としても頭脳としても存分に使い潰してください!!』

 無邪気に笑う相変わらずなフォルトゥナに、ヒヅキは困ったような寂しいような曖昧な笑みを浮かべた。

『まぁ、うん。その時はよろしく頼むよ』

『はい!』

『それで、魔力回路を開通させた後はどうするの?』

 このまま続けてもしょうがないので、ヒヅキは話を元に戻す。

『あとは魔力回路の調整をしましたら、縛って纏めてこれは完成です』

『そうなの? それは何をする魔法道具なの?』

『これは周囲の流れを変える魔法道具です』

『どういうこと?』

『例えばこの場で使いますと、この魔法道具を中心とした周囲に気流を生み出します』

『ふむ』

『これを水の入った小さな容器に入れますと、水流が生まれます』

『うん?』

『それだけです』

『……規模は?』

『気流ですと、最大で棒の周辺数センチメートルほどに渦上の気流が生じるぐらいです。水流も、水を飲む際に使用する容器程度ならば、物を混ぜるのに使えます』

『……な、なるほど。まぁ、アイリスさんの保有魔力量は少ないから、それぐらいがちょうどいいのかもね』

『はい。これでも魔力の扱いの訓練にはなりますので、ちょうどいいかと』

 そう答えると、フォルトゥナは作業を再開させる。

 棒の先端の方を針でなぞって何かをしているものの、ヒヅキにはその作業が何の為に必要なのかは分からない。それでも、ヒヅキは完成まで見学を続けた。

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