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再会65

「これは! ヒヅキ様ではありませんか!!」

 家の中から出てきたアーイスは驚いたような声を出すと、直ぐに姿勢を正して緊張した様子を見せる。

 そんなアーイスに苦笑すると、ヒヅキは挨拶を口にする。

「お久しぶりです。アーイスさん。こんな時間に突然の来訪申し訳ありません」

「いえ! ヒヅキ様でしたらいつでも大歓迎ですよ!」

 本当にそう思っているような声音に、ヒヅキは軽く会釈して礼をした。

 玄関口とはいえ、そこそこ大きなアーイスの声が聞こえたのか、奥からアーイスの妻と娘であるマリアが少し慌てたように出てきた。

「まぁ! 本当にヒヅキ様ですのね!」

 嬉しそうな声を上げると、マリアは前に出てきてヒヅキの前で跪き、祈るように胸元で手を絡ませて顔を俯かせる。

 それに続くアーイスの妻とアーイス。跪拝する三人を目の前に、ヒヅキは一瞬固まってしまう。

 しかし直ぐに気を取り直して、ヒヅキは三人に止めるように促す。その後ろで、フォルトゥナが三人の行動に感心したように頷いた。

 そんな騒動が在ったものの、無事に三人を立たせたヒヅキは、用件を伝える前に紹介しておいた方がいいだろうと思い、ヒヅキの少し後ろでフードを目深に被って立っているフォルトゥナの方へと顔を向ける。

 フォルトゥナはヒヅキの視線を受けて、被っていたフードを下ろす。

「ッ!」

「!!」

「まぁ!」

 現れたフォルトゥナの顔を見て、三人は驚きを顔に浮かべる。しかし、三人の反応の根幹は別物の様に思えた。もう少し詳しく言えば、マリアは純粋にフォルトゥナの美貌と同族だという事への驚き。しかし、アーイスとその妻は、予想外の人物の登場への驚きに、恐怖が混ざっているようにみえた。

「彼女はアルコといって、私の古い知り合いです」

「古い知り合いですか?」

「ええ。色々あって今は一緒に旅をしているのです」

「まぁ。羨ましいですわ」

 純粋な目をフォルトゥナに向けるマリア。その横でアーイス達夫婦は、困惑したようでいて後ろめたい感じで目を泳がせていた。

 そんな様子に気づいたヒヅキは、マリアと話しながらその原因について考える。二人の様子がおかしいのはいつものことだが、今のように落ち着きが無くなったのはフォルトゥナの顔を見てから。

 どういうことだと首を捻ると、フォルトゥナのエルフの国での立ち位置と、アーイスのかつての経緯を思い出す。もしかしたらその辺りが関係しているのだろう。

 ヒヅキがそう思っていると、後ろに立つフォルトゥナが、アーイス達に向けて口を開いた。

「貴方達の事など別に気にしていませんよ」

 いつもヒヅキに向けているような無邪気な可愛らしい声ではなく、感情の感じられないとても冷たい声音。その鋭利な刃物を思わせる声を掛けられたアーイス達は、小さく身体を震わせて怯えた目をフォルトゥナに向けた。

『フォルトゥナ? 二人と何かあったの?』

 そんな様子を見たヒヅキは、遠話でフォルトゥナに語り掛ける。

『いえ、何も御座いません』

『そう? それにしては二人が怯えているけれど……?』

『あれは勝手に怯えているだけです。面識もありませんし、彼らとは本当に何もありません。私に手を差し伸べてくださったのはヒヅキ様だけですので』

『……ああ、なるほど』

 フォルトゥナの最後の言葉で、ヒヅキもやっと理解する。アーイス達が昔フォルトゥナが町の隅に追いやられて死を待っていた時、外から眺めていたか無視していただけの有象無象の一人だったという事に。

 そして、マリアは幼かったから当時の頃をあまり覚えていないのだろう。

 とはいえ、ヒヅキにとってはどうでもいい事。フォルトゥナも気にしていない以上、わざわざそこに触れる必要はない。

 そう判断したヒヅキは、アーイス達の様子を無視して、早速本題に入ることにした。

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