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再会64

 気を緩めた門番に、ヒヅキは内心で苦笑する。いくら相手が知り合いだったとしても、それで安全とは限らないというのに。それに、現在はフードを目深に被ったフォルトゥナが後ろから付いてきているのだから、もう少し警戒するべきだろう。

 ヒヅキはそう思ったものの、無駄に警戒されるよりはマシかと、黙っておくことにする。

 門のところまで到着すると、門番がヒヅキに挨拶をしてくる。

 それに挨拶を返した後、ヒヅキはフォルトゥナと共に中に入る許可を貰った。

 村の中に入ると、二人はまずは村長の家を訪ねることにする。ただ、名も無き村の村長はドワーフだ。エルフとドワーフは表面上は友好国だったが、あまり良好な関係ではなかったという話も聞く。技術の流用が何たらという話もあるが、真偽の方は定かではない。

 そんな事を思い出すと、ヒヅキは問題ないとは思いつつも、フォルトゥナに遠話で確認を取る。

『問題ありません』

 確認すると直ぐにそう答えが返ってきた。

 ここの村に関してはエルフとドワーフは共存しているので、向こう側に関しては大丈夫だろう。

 ヒヅキの記憶を頼りに村長宅に移動していく。途中で案内を頼んだ方がよかっただろうかと思いはしたものの、それも今更だ。周囲に村人が居るとはいえ、特に見咎められていないので問題ないだろう。

 程なくして村で一番立派な2階建ての家に到着する。

 扉を叩いて来訪を告げると、少しして中から背の低い男性が姿を現す。顔の下半分を立派な髭で覆っているその男性は、ヒヅキを確認すると、驚愕を表情に浮かべた。

「おぉ! これは救世主様では御座いませんか!!」

 中々に威厳のある声で口にした村長の言葉に、ヒヅキは僅かに口の端を引き攣らせる。

「お久しぶりです。村長もお変わりなく」

「救世主様も息災で何よりです! それで、本日はどのような御用件で?」

「今回はアーイス殿に用事がありまして」

「おぉ! そうでありましたか。アーイスなら今日は家の方に居るかと」

「そうですか、ありがとうございます」

「いえいえ。救世主様のお役に立てたのであれば何よりです」

 声に似合わぬ言葉遣いに、ヒヅキは笑みを困ったようなものに変えつつ、そろそろ訂正をお願いしようと口に出す。

「あの、救世主様などという大層な呼び名は出来れば止めて頂きたく」

「む? そうですか? では、何とお呼びすれば?」

「私はヒヅキという名ですので、そのままヒヅキとお呼びください」

 そういえば名乗っていたっけ? と思ったヒヅキは、一応名乗っておく。

「そうでしたか。では、これからはヒヅキ様とお呼びさせて頂きます」

 そう言うと、村長はにかりと豪快な笑みを浮かべたような気がしたが、顔の下半分が髭に覆われていて判りにくい。

「……お願いします。それでは私はこれで。これからアーイス殿のところへ伺わせて頂こうかと」

 様も取りたかったヒヅキだが、フォルトゥナで慣れていたのか直ぐに諦めて本来の目的の方に頭を切り替える。

「ああ、すみません気がつかずに」

 慌てた村長に礼をすると、ヒヅキはフォルトゥナを連れてアーイスの家に向かう。

 アーイスの家は村の端の方に建っているが、村に1つだけ在る門とは別方向。中央付近に建つ村長宅からもそこそこ離れていた。

 現在はまだ夕方前なので時間はあるが、アーイスの家に到着した頃には夕食時かもしれない。

 そんな事を考えながら移動したヒヅキは、大体予想通りの時間にアーイスの家に到着する。中から談笑時の穏やかな笑い声が微かに聞こえてくるので、やはり夕食時なのだろう。

 少し悪いなと思いながらも、ヒヅキはアーイス宅の扉を叩く。話し声にかき消されるかもしれないので少し強めに扉を叩くと、それに気づいたようで扉越しの返答と共に談笑の声が小さくなる。

 それから程なくして扉が開くと、家の中から目的の人物であるアーイスが姿を現した。

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