再会63
ヒヅキは少し考えるも、難しく考えてもしょうがないと、とりあえず食料でも持たせるかと割り切ることにする。いくら有能な魔法であろうとも、使わなければ意味がないのだから。
そう考えている内に南門に到着する。その時には既に昼も過ぎていた。
出る時は、身分証明書が無い者は簡単な質問と持ち物検査を受ける。しかし、商人など大量の荷物や硬貨を持ちだす者は身分証明になる物を持っている場合がほとんどなので、出る時はあまり並ばない。
しかし、ヒヅキ達はそんなモノは持っていないので、簡単な質問と荷物検査を受けた。とはいえ、不審なモノは持っていないので、直ぐに解放されたが。
南の門を3つ過ぎて外に出ると、そのままショッリの森を目指して進んでいく。その道中で最初の休憩をした時に、ヒヅキはフォルトゥナに食料を預けた。
ガーデンを出たのが昼過ぎだったので、休憩した夜中でもまだショッリの森には到着出来なかったが、もう目と鼻の先に森はある。
僅かな食事と水を飲むと、休憩もそこそこに移動を再開させて進んでいく。
フォルトゥナがガーデンを出た時に既にフードを目深に被っていたのもあるが、念の為に外でもそのままフードを目深に被ってもらっているも、ショッリの森が近づくにつれ人の数も減っていく。
ショッリの森では途中で別の道に逸れるので、人目も気にしなくてはならない。とはいえ、今はそこまで気にする必要も無いので、まずは森に入るところから。
森に入れば視界も悪くなるので、後は人の目を掻い潜って離れることも容易くなる。
ガーデンからショッリの森の直前までは整備された道が続いているが、それももうじき終わる。道幅も徐々に狭まっているが、森はもう目の前だ。
ガーデンを出た翌日にはショッリの森に入る。入ったのが明るい内だったが、森が少しずつ深くなっていき、周囲は薄暗くなっていく。
そろそろいいかと考えたヒヅキは、フォルトゥナに遠話で道を逸れることを伝えて、密かに森の奥へと入っていった。
道を逸れてからそのまま進んでいく。ヒヅキは前に通った道を覚えているので、たとえ森の中であっても迷うようなことはない。
道中で幾度か休憩を行い、その時にヒヅキはフォルトゥナに魔法を教わる。一応全てに適性が在るからか、習えば基礎的な魔法はある程度は使えたものの、全て威力や効果が本来発揮されるであろうと推測される水準に届いていなかった。
フォルトゥナ式収納魔法は、見た目は両掌でゆるく包み込むぐらいの広さの収納空間が使えたぐらい。
それでも、諦めていた空間拡張に成功したので、実際の収納容量は数倍程度はある。なので、ちょっとしたものなら難なく収納できた。
空間収納は取り出しが楽なので、現在なけなしの収納容量には、使用頻度の高い水瓶と容器を収納している。それだけで空きがほとんどなくなったが。
そんなこんなで森の中を進み、昼が過ぎた辺りで名も無き村が近くなってくる。何度も休憩を取っていた割にはやや早い到着であった。
「………………」
名も無き村から少し離れた場所で、ヒヅキは足を止めて村に目を向ける。
『どうされました?』
急に足を止めたヒヅキに、フォルトゥナは一度視線の先を確かめてから、ヒヅキに目を向けて問い掛けた。
『いや、何でもないよ』
ヒヅキは頭を振ると、歩みを再開させる。目的がある以上、行かない訳にはいかない。
名も無き村は周辺が切り拓かれ、肩ぐらいまでの高さのそれなりに頑丈そうな木の柵に囲まれている小さな村で、村の建物は一階建てがほとんど。
柵も家も一部真新しくなってはいるが、それ以外に特筆すべき部分は無い。素朴な村。
簡易的な門のところには見張りが一人立っていて、近づいてきたヒヅキを見つけて慌てたようにしている。しかし、ヒヅキの顔を覚えていたのか、顔を確認してどこか安堵した雰囲気を纏った。




