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再会62

 小さく笑った後、ヒヅキはどう答えればいいかと少し考える。

『もう少し細かく言えば、食事というよりも味、かな』

『味ですか?』

『そう、味。美味しいや不味いといった味。それに食感もかな』

『はぁ』

 分かるような分からないような、と言いたげなフォルトゥナに、ヒヅキは説明を続ける。

『つまりね、味や食感を楽しむんだ。出来れば旅の途中でも料理ぐらいするべきなんだろうが、準備や片付けが手間だからね』

『楽しむですか?』

『そ。味や食感なんてものはさ、余裕が無いと楽しめないからね』

『余裕ですか?』

『うん。心の余裕。心に余裕が在るから味を楽しもう、食感を楽しもうと考えられる。工夫しようとかもそれだね。でも、逆に余裕が無ければ、そんな事は気にしない。食事なんて栄養補給だ、腹が満ちればそれでいい。何をやるにも工夫を考えず、視野が狭くなる。そして、そういった者は破滅へ進む。だからね、私はせめて食事ぐらいは楽しもうと思うのだよ。正直、私もフォルトゥナと同じでそんなに食事は必要としていないからね。それでもわざわざ食事をして、まだ自分が大丈夫な事を確認しているんだよ』

『そうだったのですね』

『そう。それでいて、本当に食事が美味しいなら、なおのこといいというだけさ』

 小さく肩を竦めてヒヅキは説明を終えた。

『素晴らしい考えです!』

『そう? ま、心に余裕を持たないと色々大変だからね』

 何処かで聞いたような事を口にしながら、ヒヅキは南門を目指して足早に進んでいく。

 その後を苦も無く付いてくるフォルトゥナは、尊敬するような純粋な目をヒヅキに向けている。

『とはいえ、フォルトゥナには今更な話かもしれないけれど』

『いえ、大変勉強になりました!』

『そう? ……まぁ、フォルトゥナなら力で全てをねじ伏せられるだろうさ』

 ヒヅキはフォルトゥナの戦いを直接見たことはないが、それでもフォルトゥナが強いのは理解出来た。

『まぁ、それはそれとして。フォルトゥナのその収納魔法について教えてくれない?』

『はい! 勿論です! 私の知識は全てヒヅキ様のモノなのですから、遠慮なさらずに命令してください!』

 うきうきとしてそう言うと、フォルトゥナは収納魔法についての説明を始める。 

 フォルトゥナの扱う収納魔法は、通常の収納魔法を発展させた魔法であった。ただ、通常の収納魔法は背嚢や鞄などの区切られた空間を拡張させているのに対して、フォルトゥナの収納魔法は、その区切りを空間に対して設定しているもの。

 空間を区切るだけでも通常は不可能。たとえ魔法の扱いに長けたエルフであっても、空間を把握して区切る事が出来る者などほとんど居なかっただろう。それほどに高度なモノだが、更にはその区切った空間を拡張させるという方法は常軌を逸しているとしか思えない。

 フォルトゥナの説明を受けていくうちに、ヒヅキはその高度過ぎる手法に苦笑にも似た笑みしか浮かばない。

 ヒヅキでも、空間を把握して区切るところで限界だ。何とかそこに僅かに収納まではいけるだろうが、そこまでだろう。だというのに、更に空間を拡張したうえで、そこに大量に収納出来るなんて事が行える者がフォルトゥナ以外に居るとは到底思えなかった。

『……なるほど。教えてくれてありがとう』

 フォルトゥナの説明を聞き終えたヒヅキは、礼を述べる。理論は何となく理解するところまで出来たものの、それを実際に行使可能かどうかというのは別物で、魔力の制御や構築する魔法の処理、それでいて収納魔法を維持し続ける難しさ。そういった部分があまりにも高度な為に、ヒヅキでは完全には再現不可能な魔法であった。

 改めてフォルトゥナの異質さを理解しつつ、有用な魔法の使い手としてヒヅキのなかでのフォルトゥナの価値が上がる。

 とはいえ、荷物を預けるというのは色々考える部分がある。信用していたとしても、必要な時に預けていて荷物が手元に無いという状況もあり得るのだから。

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