死闘
マリアは四足歩行で背に鳥の羽を生やし、尻尾は六匹の蛇のようなスキアと戦っている村の戦士たちの横に移動する。
「大丈夫ですか!?」
そのマリアの問いに、隣に居た魔族の戦士が一瞬驚いた表情を見せるも、すぐに真剣な表情になって答えた。
「大丈夫だ!君は危ないから下がってなさい!」
そう言われることを想定していたマリアは、スキアに強い視線を向けながら怯むことなくそれに応える。
「覚悟は出来ています。足を引っ張ったりはしませんのでご心配なく」
そう言い終わると同時に戦士たち目掛けて降り下ろされたスキアの前足を、マリアは得意の防御結界の魔法で防いでみせる。
「この通り防御魔法は得意ですので、守りは私に任せて早く倒してしまいましょう!」
戦士たちにそう言い放ちつつも、マリアは内心でホッと胸をなでおろす。
回復には十分な時間が経ったとはいえ、ちょっと前にスキアの攻撃を防ぐのに大量の魔力を消費したのだ、先ほど無事にスキアの攻撃を防ぐことが出来たことでちゃんと戦えることが確認出来た。
「……了解した!では攻撃は引き続き我らが担当しよう」
魔族の戦士は思うところもあるのだろうが、戦える者が一人でも多く欲しい現状では、スキアの攻撃を防ぐことが出来るマリアが戦列に加わるのを容認するしかなかった。
その魔族の戦士はこの場の指揮官だったようで、マリアに防御を任せた後にすぐさま他の戦士たちに指示を飛ばす。
その間もスキアの攻撃は続くも、マリアの防御魔法でスキアの攻撃が防げるようになったことにより、先ほどよりは戦闘らしくなっていた。
そこにマリアたちの少し後方からマリアの父が弓で援護射撃をはじめたことにより、外から見れば互角近くまでになっていた。
(長期戦は避けたいところですが……)
マリアはスキアの全ての攻撃に気を配りながらも、スキアを倒す決定打が欠けていることに焦りを覚える。
スキアの攻撃は一撃一撃の威力が高く、それを一発防ぐだけでも並の魔法使いならば魔力のほとんどを使わなければならないだろう代物であった。そんな攻撃からマリアが自分自身のみならず複数人を守っていられるのは、マリアが生来桁外れた魔力の持ち主で、更には結界魔法に非凡な才能があったからこその芸当であった。
しかしそれは森で襲われた時のようにマリアが万全の状態であってもそう長くは保てないモノであるだけに、回復しているとはいえ万全の状態ではない現在のマリアでは持続時間は更に短いものになっていた。
つまりはこのままではせっかく互角近くまで持ってきた戦闘はすぐにでも終わりを迎えるということで、早く終らせないとまだ二体スキアが残っている現状では、もう破滅しか残されていなかった。