表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
615/1509

再会57

 昼食は穏やかに過ぎていく。食事中は午前中の事をそれぞれが述べたり、今後の予定を簡単に説明をしたりしながら食事も進む。

 そうして昼食が終わり、ヒヅキはフォルトゥナと共に外に出る。

『それで、アイリスさんにちゃんと説明はしてくれた?』

 フードを目深に被り、半歩後ろを歩くフォルトゥナにヒヅキは問い掛ける。昼食の時に簡単な話は聞いていたので、それは確認の為の問い。

『はい、しっかりと。旅に出ている最中に魔力の扱いを練習する方法と注意事項も伝えましたので、今すぐここを発ったとしても、あの娘に関しては問題ないでしょう』

『そっか。ありがとう』

『いえ。それで、ヒヅキ様の方はどうでしたか? 先程の話ではあまり上手くいかなかったようですが』

『そうだね、使い切ることは出来なかった。それに使いきれそうな兆候も感じられなかったね』

『左様でしたか。しかしながらそうしますと、本当にあの水差しには制限があるのでしょうか?』

『分からないね。制限が在るのか無いのか、前提が間違っているのか。この辺りは私では調べる術がないのだが、フォルトゥナは何かある?』

 横で少し後ろを歩くフォルトゥナへと、ヒヅキはちらりと視線を向ける。

『申し訳ありません。大雑把にでしたら可能ですが、詳細な情報になると難しく……』

 鑑定は専門分野でないフォルトゥナだが、ヒヅキの望みを叶えられない事に心底申し訳なさそうに頭を下げた。

『そっか。でも、大雑把でも分かるのは凄いね。とりあえず後で一度鑑定してみてよ』

『畏まりました』

『お願いね。今までだとウィンディーネに訊くしかなかったからさ』

 その事をため息を吐くように言葉にする。そもそもヒヅキはウィンディーネを信用していないので、事実かどうか分からないというのは結構な苦痛であった。

 ただ、ウィンディーネもある程度は線引きしているようで、伝えるべき情報は話の中に一応混ざっていたりする。遠回しな言い方も多いが。いや、むしろ遠回しな言い方ばかりだが。

 それでいて多分嘘はつかないので、あの魔法道具が使用制限があるのは間違いないのだろう。その期間が一日なのも。ただ、一人が必要な量という部分の頭に、最低でも辺りの言葉がくっ付いていそうなのが厄介なのだが。

 その事を思い出したヒヅキは、思わず漏れそうになったため息を飲み込み、頭を切り替える。

 現在はプリスの家に向かっている最中だが、プリスの家はガーデナー城から少し離れた場所に在る、城勤めで尚且つ一定以上の地位に居る臣下達が暮らす区画の中に在った。

 そこまでの道のりは、回り道しないのであればそこそこ人通りの多い道を通る必要があるので、気乗りはしない。しかし、訪ねる必要があるので、文句も言えない。プリスの家が無理ならガーデナー城を訪ねるぐらいしか道はないのだから。

 やや遠回りしながら通りを足早に移動していく。ギルド訪問時同様に何か手土産でも必要かと一瞬思ったが、今まで持っていってなかったので別にいいかと思い直す。そもそも王女の最側近だった者の家に持っていく手土産など用意のしようもない。何が適しているか分からないというのもあるが。

 通りに並ぶ店を視界の端に収めながらそんな事をぼんやり思いつつ、何か必要そうな商品でも置いていないかと、足早に通り抜ける一瞬で確認していく。

 現在通っているのは大通りでも商人区画でもない。しかし、それ以外でもまばらに出ている店はある。中には違法に出店している店も在るも、あまり派手にやらなければそこまで厳しく取り締まりはされないという。

 値段の方も幅が広く、商人区画と大通りの価格が混ざっている。中には商人区画より安い品もあるが、その場合は盗品や粗悪品であって、掘り出し物である可能性は低いので注意が必要だ。

 そんな通りを周囲を確認しながらヒヅキ達は足早に通っていく。

 それなりに人通りがあるのでごみごみしているが、何処かに花でも植えられているのか、時折鼻の奥で香る様な甘さの匂いが薄く届いている。周囲に飲食店が無いので余計に届きやすいのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ