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再会56

 部屋に寄ったヒヅキは、背嚢を下ろしてから侍女と共に食堂に向かう。

 既に昼にはなっているが、まだ昼食の準備は出来ていない。それでも、もう少しで準備が整う時刻なので、やる事も特にないので先に食堂に向かう事にした。

 ヒヅキが食堂に到着すると、先にシロッカスが席に着いて書類に目を通しながら待っていた。

「おお、早かったな! 講義の方は終わったのかい?」

 食堂に入ってきたヒヅキに気づいたシロッカスは、驚いたように訊いてくる。

「今日は私は別行動だったので、講義の方はまだ続いているかと」

「別行動? 何をしていたんだい?」

 シロッカスの質問に、ヒヅキは水瓶で大甕に水を注いでいたことを話した。しかし、シロッカスは直ぐには意味を理解出来なかったのか、数拍の間動きを止めると、やっと理解したのか大きく頷く。

「ほぉ、そんな凄い魔法道具を持っていたのか!」

 感心したような声を出すと、シロッカスは素直に驚きを表情に表す。

「はい。以前遺跡を探索した際に見つけた物でして」

「そうだったのか。そんな物まで眠っていたのだな!」

 遺跡からの発掘品の数々でも思い出したのか、シロッカスは興味深そうな目を向ける。それを見て、ヒヅキは部屋から取ってきた方がいいのだろうかと少し悩む。

 しかし、まぁいいかと思い直し、侍女が引いた椅子に腰かけた。

「ところで、アイリスの方はどうかな?」

 シロッカスの言葉に、ヒヅキはアイリスが受けている魔法講座の進捗具合の事だろうと直ぐに理解して、それについて答える。

「順調に学んでいるようですよ。今のままでしたら、私達が少しガーデンを開けている間に魔力の扱いに慣れることでしょう」

「おぉ! そうか! それは楽しみだな」

 娘の事だからか、楽しげな笑みを浮かべるシロッカス。そんなシロッカスの様子に、ヒヅキは大した魔法は使えないことを伝え忘れていただろうかと内心で首を傾げる。よく覚えていないが、一応やんわりと伝えた方がいいかと思い口を開く。

「そうですね。しかし、魔力の扱いに慣れたからといって直ぐに魔法が使えるようになる訳ではありません。それに、アイリスさんが重圧を感じないようにご期待はほどほどの方が宜しいかと」

「そうかね? ふむ。ヒヅキ君の言う通りかもしれないな」

「はい。魔法は精神状態も関わってきますので」

「なるほど。私は魔法については詳しくないが、君が言うのであればそうなのだろう」

 記憶するように頷いたシロッカスに、ヒヅキも頷き返す。

「はい。アルコが教える予定の魔法は簡単な魔法ですので、戻って来てから教える予定ですが、それまでに魔力の扱いに慣れていれば、案外早く修得できるかも知れませんね。まだ分かりませんが」

「そうか? それは楽しみだ! 早く見てみたいが、君の忠告に従って焦らずにいよう」

「その方がよろしいかと」

 楽しみな感情を抑えるように重々しく頷いたシロッカスに、ヒヅキは微笑みを返す。

 そうして二人が会話をしていると、食堂にフォルトゥナとアイリスが侍女に案内されて入ってくる。

 それに挨拶を交わすと、アイリスはいつものシロッカスに近い席に、フォルトゥナはヒヅキの隣に座った。

「何のお話をされていたのですか?」

 食堂に入ってきた時の楽しげな雰囲気に、アイリスが可愛らしく小首を傾げてシロッカスに問い掛けた。

「うん? 色々な」

「色々ですか?」

 食事が運ばれてくる中、アイリスがシロッカスに顔を向けて尋ねる。

「ああ。ヒヅキ君が今日何をやっていたかとか、アイリスの魔法の進捗具合とかだな」

「私の魔法についてですか?」

「ああ。つい、気になってね。時間もあった事だから」

「そうでしたか。私の方は順調……なのかはよく分かりませんが、頑張っております」

「そうか。このまま頑張るといい!」

「はい! 御父様!」

 華やかな笑みを浮かべたアイリスを見て、シロッカスも幸せそうな笑みを返す。

 二人は会話が一段落すると、既に目の前に並んでいた料理に気づいて驚きつつ、四人で食前の祈りを捧げた。

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