再会53
答えが出ずに頭の中をぐるぐると回る問題を、ヒヅキは一旦横に措く。とりあえずエインとプリスに関しては、余計な事は考えずに約束を果たす事が優先だろうという結論に達した。
「ふぅ」
そんな詮無き事を考えて疲れたヒヅキは、小さく息を吐き出して立ち上がる。
それに続いてすぐさま立ち上がったフォルトゥナを視界の端に捉えながら、ヒヅキは窓を閉めてベッドに移動すると、そのまま横になる。
続いたフォルトゥナがヒヅキにのしかかるようにベッドに寝るが、諦念に至ったヒヅキはもはやそれを気にせず、フォルトゥナをいないものとして考えながら瞼を閉じた。
暗く静かな世界の中、ヒヅキは若干意識を沈めながら身体を休める。しかし、そうしているとウィンディーネの存在を強く感じてしまい、ヒヅキは大きく顔を歪めて目を開ける。
目だけを動かし周囲の様子を確認するも、ウィンディーネの気配は在っても、姿までは確認出来ない。
ヒヅキは小さく息を吐き出すと、視線を自分の身体の方に向ける。そこには、胸元辺りを枕に眠っているフォルトゥナの姿。そのせいで身体があまり動かせないが、そこは問題ない。
そのまま目線を動かして、窓の方に向ける。まだ外は暗く、明るくなる様子はない。まだ真夜中なのだろう。
視線を天井に戻すと、やることも無いので再度目を閉じて意識を沈める。
次にヒヅキが目を覚ました時には、室内が少し明るくなってきていた。
起きるにはまだ早い時間ではあるが、特に眠気も無かった為に、ヒヅキは今日の予定である水瓶の水量を量る方法について考える。
(水をどこに貯めようか?)
毎日大量に水が出るとはいえ、元々水が不足気味な場所で育ったヒヅキにとって、実験の為とはいえそのまま水を捨てるのは流石に気が咎めたので、何か容器に入れようと考えた。しかし、想定で一人分とはいえ、大量に水が出てくると予想できるために、大きな入れ物を何処かで調達する必要があった。
(シンビさんにでも頼めば、大甕ぐらい用意してもらえるか?)
前にシロッカス邸の台所で見た大きな水瓶の存在を思い出したヒヅキは、予備にでも空の大甕がないものだろうかと期待する。それと同時に、もし無かった場合も考えていく。
(井戸の中に出すのもいいが、その場合は量がいまいちよく分からないからな。やはり大きな入れ物がいいか……そこの水差しだとどれだけの数が必要になるか分からないし、他には大鍋か?)
などと考えながらも、プリスに頼めば何かしら用意してくれるかとも思う。浴槽は温泉を引いていて常に湯で満たされているという話だったので、浴槽の使用は難しい。
そうなると、やはり大甕か大鍋辺りが妥当であった。それに、大量の飲み水が確保できることは、シロッカス側にとっても悪い話ではないだろう。
とりあえずそういうことにして、起きたらシンビに尋ねてみることにした。
次にフォルトゥナによる魔法講座だが、明日発つので、今日で一旦終了となる。また戻ってきた時に再開する予定だが、続くかは不明。それは状況次第だが、留守の間はアイリスの自習となる。丁度魔力の扱いに時間が掛かるようだったので、その辺りをさせておけばいいのではないだろうかとヒヅキは考えた。この辺りはフォルトゥナが起きたら相談すると決める。もしも戻ってきた時にちゃんと魔力の扱いを修得出来ていたら、フォルトゥナに依頼する予定のアイリス用の魔法道具をお土産として渡せばいいだろう。
そこまで考えたところで、ヒヅキはエイン達について意識を戻す。
午後にプリスの家に行くのでそこで会えればいいが、誰か居るとは限らない。なので、念のために手紙を用意しておいた方がいいだろうと、ヒヅキは思い至る。背嚢の中に質はあまり良くないが紙と書く物はあったはずだと思い出し、ヒヅキはフォルトゥナが起きた後に手紙を書くことにした。




