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再会48

 日が傾き始めたので、ヒヅキ達はシロッカス邸を目指して職人区画を後にする。

 ガーデンの街中を歩きながら、ヒヅキは思いついたことをフォルトゥナに問い掛ける。

『さっきの話だけれど、専門の道具はエルフ国以外にあるの?』

『詳しくは不明ですが、魔法道具を作っている場所であればあるのではないかと』

『なるほど。エルフの国に戻ればその道具は調達出来る?』

『はい。それでしたら可能です』

『そうか』

 そう訊いたはいいものの、ヒヅキがこれから向かう予定の場所とは別の方向なので、用が無い限りはわざわざ取りに戻るつもりはない。

『しかし、この辺りでエルフの国以外で魔法道具を作っているとなると、ドワーフの国ぐらいか』

『そうですね。近場で国としてでしたらドワーフしかないかと』

『国として、ね』

『はい。外に出たエルフも居ますから、何処かに道具や工房を持っている者が居てもおかしくはありません。もっとも、その場合はかなり厳重に隠しているでしょうから、情報を得るのも難しいでしょう』

『…………ううむ』

 ヒヅキは小さく唸る。国の外に出たエルフに心当たりがあったものの、同時にあまり関わりたくないという思いもまたあった。

『それはエルフが居る場所なら何処でもいいのか?』

『その地域に根付いていれば尚いいかと。ただ、エルフだから魔法道具を作れるわけではないので、エルフが居るからといって必ず魔法道具を作れる道具や設備があるとは限りません』

『まぁ、そうだね』

 頷きつつ、ヒヅキは名も無き村に鍛冶場が在っただろうかと思い出す。しかし、大して村を見て回った記憶が無い事に直ぐに気がつき、思い出すのを諦める。ただ、アーイスの家に特殊な道具っぽい物が無かったのだけは覚えている。それも視界に入った範囲でしかないが。

『外に出たエルフに心当たりがおありで?』

 考えていたヒヅキに、フォルトゥナが尋ねる。訊き方からそう思われてもおかしくないかと思い、フォルトゥナなら問題ないかとヒヅキは正直に話す事にした。

『前にアーイスというエルフの一家に会った事があってね』

『アーイス……ですか?』

 ヒヅキが告げた名前に反応したフォルトゥナは、しばし考えるように黙った。

『…………知り合いだった?』

 少し間を置いたヒヅキは、とりあえず訊いてみる。

『いえ、直接の面識はありませんが、あのエルフと同一人物なのであれば、名前だけは聞いたことがあります』

『そうなんだ。どんなエルフか訊いてもいい?』

『勿論です。私はヒヅキ様に隠し事などありませんから』

 そう言うと、フォルトゥナは自身の知るアーイスというエルフについて話し始める。

『と言いましても。あまり詳しくは知りません。私の知るアーイスという人物は、エルフの国の王と王位を争ったエルフというだけです』

『エルフの王位を争う?』

『エルフの国において王とは、王位が変わる前後にもっとも優秀な者が選ばれた後に就きますので、王が交代する際は王位争奪戦が勃発するのです』

『王位争奪戦、ね』

『はい。武力は勿論の事、知力や身体能力、人望や魔力など多岐に渡り争われ、全体の成績が最も良かった者が王に選ばれます』

『なるほどね。それで王位を争ったエルフと』

『はい』

『でも、そんなエルフが何で国外に?』

『それは、王位争奪戦に敗れたエルフは国外に追放されるからです』

『なんで?』

『将来の禍根を断つ為と言われています』

『ふむ。でも、それじゃあ優秀な人材が国外に流出するだけじゃ?』

『そうですね。しかし、王位争奪戦に本格的に参加するには、多数の推薦と一定の実力を示さねばなりませんし、それに加えて実績や人柄などが選出基準にある為に実際に参加できるエルフ自体がかなり少なく、またエルフは長命種ですので、王位の交代もかなり先の話である場合が多かったので問題にはなっていませんでした。それに一定期間外で過ごした後、新王が地盤を固めた辺りで戻る事が許される場合がほとんどでしたので』

『そうか。しかし、そんな凄いエルフだったとはね……』

 話を聞いて軽く驚いたヒヅキだが、フォルトゥナは鼻で笑うように言葉を漏らす。

『なんせよ、単なる負け犬です』

『そうか』

『はい。それに、もうエルフの国はありませんから、意味の無い話です』

 フォルトゥナの言葉に、ヒヅキもまぁそれもそうかと思い、軽く肩を竦めた。

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