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再会46

 懐かしいといっても、別に職人達と一緒に過ごしたわけではない。ただ、ヒヅキがまだ幼い頃に叔父に連れられたり、収穫した作物を町まで売りに行った際に見に行ったぐらいだ。それでも、その時の事を思い出させるには十分な空気がそこには流れている。

 そんな思いは横に措き、フォルトゥナと共にヒヅキは職人区画を進んでいく。

 職人区画は、住居区画に建つ建物よりも広い建造物が整然と立ち並び、あちらこちらから金属を叩く音が響く。それと共に熱気を感じ、この区画内だけ他より温度が高くなっている気さえするほど。

 しかし、そこに並ぶ建物は全てが鍛冶場という訳ではなく、中には裁縫場などの大人しい工房も入っている。勿論区分けされてはいるが。

 ヒヅキ達は鍛冶場を先に見ていく。

 鍛冶場が並ぶ辺りを進んでいくと、活気があったのは入り口付近だけで、奥へ進む度に稼働している鍛冶場が減り、直ぐに半分と少しぐらいになり、誰も居ない鍛冶場や閉まっている鍛冶場が目立ち始める。

 職人区画の中にも、小さいながらも商店が幾つか入っている。販売している物は周辺の職人が製作した物か、飲食物。前者は職人区画に来た旅人などの外の者に向けて。後者は周辺の職人に向けての品揃えだ。

「……ふむ」

 そんな商店の一つに立ち寄ったヒヅキは、食料関係の少なさに、食糧事情が乏しいのかと改めて考える。ただ、足りていない訳ではないようなので、今のところはそこまで重く受け止めなくてもよさそうだが。

 食料関係はそれでいいとして、ヒヅキは周辺の職人が作製した品に目を向ける。この商店の周辺は鍛冶場ばかりなので、品揃えも金属を加工したものに偏っている。

 しかし、やはり稼働している鍛冶場が減っているからか、それともそれ以上に職人自体が減っているのか、品揃えはあまりよくない。空いてる棚が目立つほどなので、職人が減っている方が深刻なのかもしれない。

(もしくは材料かもしれないな)

 カーディニア王国の現状を思えば、鍛冶に必要な鉱物がそんなに多く入手できるとも思えないので、その辺りも関係しているのだろう。そういう複合的な理由から、衰退しているということか。

 とりあえず職人区画の現状を少しは確認したヒヅキは、必要そうな物を幾つか購入する。

 外の者向けではあるが、実は値段は商人区画よりも若干安い。大通りのように外向けに少し割高ではないのは、そもそもこんな所まで足を運ぶ物好きが少ないから。らしい。

 商店を出ると、再び職人区画の見学を再開する。

『寂しい場所ですね』

 しばらく歩いていると、フォルトゥナが遠話でヒヅキに語り掛けてくる。

『そうだね。スキアの襲撃前ならもっと賑やかだっただろうね。エルフの国の鍛冶場は賑やかだったの?』

『はい。魔法道具は各方面から求められていたので、鍛冶場は常に稼働している状態でしたね』

『なるほど。確かにエルフ謹製の魔法道具は高性能だから、高くても買い手は沢山居ただろうね』

 エルフの魔法道具を揃えることが、国力に直結していた部分もあるのだから、それも当然だろう。それに、魔法道具は冒険者にも需要が高かった。

『魔法と違い魔力の消費が少なくて済みますから、魔力保有量が少ない冒険者の憧れの品のようでした』

『魔法道具は魔法の代用品みたいな側面があったからね』

『はい。魔法道具は元々戦闘の補助として作られたのですけれど』

『まぁ、性能が固定されていてあまり応用が利かない代わりに、使い勝手がいいからね。弱いとそもそも戦闘の幅が狭いから、魔法道具で十分だというのもあるのだろう』

『そうですね』

 少し同情するような響きのフォルトゥナの言葉に、ヒヅキは困ったように言葉に詰まる。ヒヅキ自身魔法が強大過ぎる為に、魔力消費を抑えられる魔法道具で代用してもいいかと少し考えていたのだから。とはいえ、魔法道具を調達する当ても無いので、ヒヅキは曖昧に頷くだけにしておいた。

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