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再会43

 誰かに後を付けられるような事もなく、無事にシロッカス邸に戻ったヒヅキ達は、夕食の前に侍女の案内でまずは風呂に入る事にした。

 風呂で汚れを落とした後、シロッカス達と共に食堂で夕食を摂る。

 それが終わると、部屋に戻る前に侍女から洗濯が終わった今朝渡した服を返された。

 部屋に戻って服を背嚢に仕舞うと、まだ時間が早いので、窓を開けて外に目を向ける。

『ガーデンを散策してみてどうだった?』

 窓の外に目を向けながら、ヒヅキは隣に座っているフォルトゥナに遠話で問い掛けた。

『ごみごみしていましたが、少し懐かしかったです』

『懐かしい?』

『はい。昔は私も貧民窟で暮らしていましたから』

『ああ、なるほど』

『いい思い出は無いのですが、唯一の幸せな出来事であるヒヅキ様と出会えた場所でもありますので、多少は懐かしさを覚えました』

『……そう。まぁ、嫌な思いをしなかったのならよかったよ』

『ヒヅキ様と一緒なので、それは大丈夫です!』

 終始嬉しそうなフォルトゥナの答えに、ヒヅキはどう答えたものかと言葉に窮する。

 そんな間の沈黙にも、フォルトゥナはニコニコしながらヒヅキを見ていた。

『……以前はここももっと賑やかでね。その時はもっとごちゃごちゃしてたね』

 困ったヒヅキは、その事に触れない事にして、別の話題をフォルトゥナに振る。

『今以上ですか! それは凄いですね!』

 フォルトゥナは特に気にすることなく、素直に驚きの声を上げた。

『道も人で埋まっていて、歩くのも大変だったよ』

『そこまでですか! 昔のあの町みたいですね』

『そうだね。フォルトゥナと出会った時のあの町は、様々な国から多種多様な種族が集まっていたからね。混雑ではそんな感じだけれど、凄さで言えば、やはりあの町の方が上かな』

『そうでしたか!』

『まぁ、あの頃は子どもだったからそこまで鮮明に覚えている訳でもないけれど』

『お恥ずかしながら、私もそこまで覚えてはおりません』

『そっか』

『はい』

 フォルトゥナは頷くも、それでもヒヅキよりは覚えているのは間違いない。

『明日ももう少しガーデンを見て回ろうと思うけれど』

『何処までもお供致します!』

『そう。明日は職人区画の方に向かおうと思ってる』

『職人区画ですか?』

『そのまま職人が集まっている区画で、武器や防具から包丁や金具まで様々な職人が作業する場所が集まってる場所さ。まぁ、鍛冶中心だがね』

『なるほど。それは興味深いです!』

『ああ、一応言っておくと、人間の鍛冶師は、エルフの鍛冶師のように魔法道具は作っていないからね』

『はい、存じております!』

『まぁね。エルフの魔法道具は有名だったから。もうあまり手に入らないけれど』

『ヒヅキ様の義手を作られた鍛冶師は健在では?』

『生きてはいても、一人だからね。作れる量にも限りがあるし、そもそも必要な物が揃うかどうかすら分からないからね……魔法道具を作るために必要な材料なんて知らないけれど』

『ちょっとした魔法道具でしたら、魔鉱石があれば簡単に作れますよ?』

『…………まぁ、一応訊くけれど、フォルトゥナは魔法道具を作れる?』

『設備が整っていれば可能です!』

『そ、そうなんだ。いろいろ勉強したんだね』

『はい! ヒヅキ様のお役に立てればと、色々学びました!』

 本当に嬉しそうに答えるフォルトゥナに、ヒヅキは少し呆れつつも感心した。エルフだからといって誰でも魔法道具が作れるわけではなく、そこには確かに才能も必要な分野でもあるのだから。

『そっか……フォルトゥナは凄いんだねぇ』

『そ、そうですか!?』

 ヒヅキの心からの賞賛の言葉に、フォルトゥナは照れながら訊き返す。

『ああ。強いだけじゃなくて、知識も技術も持っているなんて凄いよ』

 そう褒めながら、ヒヅキはふと魔鉱石の扱いに長けているのであれば、もしかして人形作りが出来るのではないかと思い至る。もしそうであれば、ウィンディーネの手助けがなくとも完璧な人形が作れるようになるが、それを話していいものかという不安もあった。何せ、気配だけではあるが、近くには人形の作り方を特別にヒヅキに教えたウィンディーネ本人が居るのだから。

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