再会33
現在のカーディニア王国内の食糧事情の説明を受けたヒヅキは、現在の冒険者の活動について訊いてみた。
「それで、サファイアさんやシラユリさん達冒険者は、現在何をしているのですか?」
「まぁ、前と変わらず街中の雑務の他に、郊外で行われている町村の復興の手伝いや警固。畑仕事なんかもやっているわね。ソヴァルシオンではスキアの調査や防衛が在るけれど、こちらでは調査はあっても防衛は緊急時の備えとして少数待機しているぐらい。その分外に出ているから、スキアが居るならそちらが先に襲われるかもしれないわね」
「そうなんですね。仕事は多いのですか?」
「ええ。数もですが、依頼での行動範囲も広いうえに拘束時間もありますからね、冒険者総出でも処理しきれないぐらいです」
軽く肩を竦めると、サファイアは小さく息を吐いた。そこに、シラユリが皮肉っぽく声を掛ける。
「理由はどうあれ、最終的にスキアから逃げたのだから、数はそんなに減っていないというのになー」
そんなシラユリをサファイアは一瞥すると、同意するように息を吐く。
「そうですわね。ヒヅキさんに押し付けて楽した冒険者達なのですから、これぐらい捌くべきですわね。数だって各地に散っているとはいえ、兵士ほど減った訳でもありませんし」
「だなー。まぁ、急ぎじゃないのを後回しにしているだけで、なんとか回ってはいるんだけどなー」
「それでも少しずつ滞ってきていますわよ」
「それは処理能力が低いギルドのせいだろー。ウチは他の倍ぐらい処理しているぞー」
「シラユリちゃんのところは優秀な方が多いですから。ここでもそこまでは無理ですわよ」
「ギルド員の数は多いのになー」
「皆が皆、優れている訳ではありませんわ。むしろシラユリちゃんのところがおかしいのよ」
「ちゃんと教育しないからだろー」
「……してますよ。知っていると思うけれど、これでもここは優秀な方なのよ?」
呆れたようなサファイアに、シラユリは小さく笑う。
「まぁ、他よりなー。もう少し他も頑張って欲しいがなー」
「そこは否定しませんが」
サファイアは疲れたように息を吐く。冒険者稼業も楽ではないというのがよくわかる様子ではあるが、ヒヅキは関係ないとばかりにそのやり取りを眺めつつ、他に何か訊くべきことはあっただろうかと思案する。
「ガーデンに流れてきた者も増えたのだから、それらに雑務を任せてもいいだろうになー」
「それもいいですが、そういった者達は復興や開拓、農耕の方に派遣されていますからね。それに、全員が全員協力的という訳ではありませんから」
「それは知っているが、そういった者達向けの仕事もあるだろー」
「まぁ、簡単な仕事なら出来そうですが」
「あとは誰もが嫌がる仕事なー」
「しかし、真面目に働くかどうか……」
「その時はその時で消せ――やりようはあるさー」
「…………相変わらずシラユリちゃんの本質は残忍ねー」
「ははー。そんな事はないさー」
サファイアの呆れたような顔に、シラユリは子どものような見た目通りに華憐な笑みを浮かべる。
それで少しの間が出来たところで、ヒヅキは口を開いた。
「そういえば、現在のカーディニア王国の人口がどうなっているか分かりますか?」
流石に正確な数字どころか大まかな数字さえも分かる訳はないと理解してはいるも、何となくでも判らないかと思い、ヒヅキはそう訊ねた。
「人口ですか? そうですね、私は詳しくは知りませんが……」
そこまで言うと、サファイアはシラユリの方へと目を向ける。
「私でも正確な数字までは分からないぞー?」
「何となくでもいいのですが」
「それでいいなら教えるがー……その前に、何でそんな事を訊きたいんだー?」
「スキアの襲撃という珍しい現象ですからね、被害状況を知りたいと思いまして」
互いに笑みを浮かべて見つめ合うも、直ぐにシラユリが折れて話し始めた。