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再会28

 翌日も朝も早くから起きると、ヒヅキはフォルトゥナを起こしてから朝の準備を始める。

 朝食の時間よりも早く準備を終えると、ヒヅキは部屋に置いてある椅子に腰掛け、起きてすぐに開けた窓の外に視線を投げた。

 朝の清々しい静寂が流れる空気を感じながら、窓から見える色の薄くなってきた空に目を向ける。

 太陽はまだ窓からは見えないが、ヒヅキにとってはそちらの方が都合がいい。外から入ってくる空気は清涼感があり、起きたばかりの身体には気持ちがいい。

 運んでくるにおいは、花や緑に埃に料理などが混ざって薄まった不思議なにおい。その中で一際強く鼻に衝いたのは、甘く鋭いにおいだった。

「これは……何のにおいだろう?」

 嗅ぎ慣れないそのにおいに、ヒヅキは首を捻る。

 においは薄まっているはずなのだが、そのにおいだけは近くから発せられているかのような鮮やかさが残っていて、思わず見回した部屋の中には、においの発生源となりそうなものは発見出来なかった。

 椅子から立ち上がったヒヅキは窓の外へと顔を出してみるも、視界の中にはそれらしき物体は何も無い。もしもこれが自然物であったならば、余程強烈なにおいを発していることだろう。

「もしもそうであれば、近づいただけで気を失いそうだ」

 軽く肩を竦めると、ヒヅキは戻って椅子に腰かけ直す。

「……フォルトゥナも椅子に座れば?」

 椅子に腰掛け一息吐くと、ヒヅキはどうしても気になって、椅子の後ろに立つフォルトゥナに声を掛ける。

 部屋の中には丸机が1つと、それを囲むように椅子が3脚置かれていた。ヒヅキはその内の1脚を窓側へと少し動かして座っているのだが、近くにはまだ2脚の椅子が主不在で置かれていた。

「畏れ多いことです」

 椅子を勧めたことに対するフォルトゥナの返事に、ヒヅキは何がだろうかと内心で首を捻ったが、面倒なのでそれを表には出さずに、気にしないでいいと伝えて再度椅子を勧めた。

 すると、フォルトゥナはヒヅキに頭を下げて礼を伝えてから椅子に腰かける。

 最近少しはマシになってきていたと思っていただけに、一連のやりとりに面倒さを感じつつ、ヒヅキは窓の外に目を向けることで現実逃避を行う。

 特に会話も発生せずに、静かな時間が流れていく。そうして時を過ごすと、扉が静かに叩かれ朝食の準備が整ったことを伝えられる。

 ヒヅキは返事をしつつ窓を閉めると、迎えに来てくれた女中に従いフォルトゥナと一緒に食堂に移動した。

 先に席に着いていたシロッカスとアイリスと挨拶を交わして、ヒヅキとフォルトゥナは案内された席に腰掛ける。

 全員が席に着いたところで、朝食が運ばれてきた。

 料理が全員の前に並べられると、食前の祈り捧げて朝食を食べ始める。

 こぶし大ほどの柔らかいパンに、同じぐらいの大きさの焼いた肉。汁物は野菜が沢山入っていて、副菜に葉物野菜の漬物が添えられている。

 全体的な量も丁度よく、普段木の実を齧っているヒヅキにとっては、相変わらず豪華な食事であった。

 軽い歓談を交えながら朝食は進んでいくが、フォルトゥナはほとんど喋らないので、必然的にフォルトゥナを除いた三人での歓談となった。一応話を振られたらフォルトゥナは短く答えはするも、自主的には一切参加しない。

 それでも和やかな雰囲気で朝食を終えると、少し食休みを挿んでから場所を移し、アイリスへの魔法講座の2回目が始まった。

 とはいえまだ2回目なので、内容は1回目の延長。まずは魔力の流れを掴むために魔法道具である指輪を嵌める。

 それでアイリスの体内を循環している魔力の一部が指輪へと流れていく。

 アイリスはその流れに意識を集中させようと目を瞑っているが、それで上手くいくかどうかはアイリス次第。

 講義は午前中で終わるが、現在のアイリスが保有する魔力量では、講義の時間一杯指輪を嵌め続けるのは難しいので、途中で一度指輪を外す。

 その時にフォルトゥナがアイリスに所感を求めると、どうやら曖昧ながらも中々にいいところまで感覚を掴めている様子であった。

 そのまま休みをしっかり取って安全に配慮しながら講義を進めていき、2回目の講義が終わった。このままいけば、アイリスは次の講義で魔力の流れまでは掴むことが出来るだろう。

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