再会24
そんな風に色々と頭に思い浮かべていると、部屋に差し込んでいる明かりが強くなる。
(そろそろ起こした方がいいかな)
明度が上がった部屋の明るさにそう判断したヒヅキは、胸元で穏やかに寝ているフォルトゥナに声を掛けるが、僅かに反応しただけで起きる様子は見られない。
ヒヅキは軽く自分の身体を揺すってみるも、それでも小さく反応するだけ。しょうがないと思いながら、ヒヅキは空いている手でフォルトゥナの身体を揺すりながら名前を呼ぶ。
「ん、んぅ」
それでやっと目を薄っすらと開けたフォルトゥナに、ヒヅキは朝の挨拶を行う。
「おはよう。フォルトゥナ」
「おはようございます! ヒヅキ様」
目元を少しとろんとさせて、フォルトゥナは嬉しそうに笑みを浮かべて挨拶を返す。
「もうすぐ朝食の時間になると思うから、朝の支度を済ませようか」
「はい!」
元気の良い返事をすると、フォルトゥナは名残惜しそうにヒヅキから離れて、ベッドを降りる。
ヒヅキもベッドから降りると、着替えを済ませて身だしなみを整える。その後に水を一杯飲み終えたところで、扉を叩く音とシンビの声が扉越しにかけられた。
「おはようございます。ヒヅキさま。アルコさま。朝食の用意が出来ましたが、いかがいたしますか?」
その声にヒヅキは扉を開くと、シンビに朝の挨拶をしてから、朝食を頂くことを伝えた。
朝食を食べることを伝えた後、ヒヅキとフォルトゥナはシンビの後に続いて食堂を目指す。
食堂には既にシロッカスとアイリスが席に着いて待っていた。ヒヅキは二人に挨拶をすると、フォルトゥナにも挨拶をさせる。
その後は会話をしながら朝食を食べ終えると、場所を移してフォルトゥナによるアイリスへの魔法講座が開始された。
魔法講座と言っても、何の基礎も学んでいないアイリスには、最初は魔力を感知するところからであった。
魔力を感知する為に、自身の体内に流れる魔力を感知するところから始める。しかし、それだけの言葉で直ぐに理解出来るのは、先天的に魔力を感じることが出来るエルフだからだろう。普通の人間であるアイリスには、それだけでは理解出来なかったよう。
それではどうするのかと思いヒヅキが見ていると、フォルトゥナは何処からか指輪を取り出しアイリスに手渡す。
「これは?」
「微量の魔力を吸い取り続ける指輪。それを嵌めて強制的に体内に魔力の流れを起こさせる。あとはそれに集中することで、魔力というモノを掴むのが目的」
「なるほど。分かりましたわ!」
フォルトゥナの説明に大きく頷くと、アイリスは早速とばかりに指輪を嵌める。
そうすると、その指輪へとアイリスの体内の魔力が僅かに流れていく。
他者の体内の魔力であるので、ヒヅキにはその魔力の流れが朧気にしか分からないものの、フォルトゥナにははっきりと視えていた。
アイリスも自分の魔力だからか、集中していると直ぐに微かに何かを掴めそうな様子を見せる。元々才能があったのだろう。
今日の講義はずっとそのままであった。結局、それでアイリスは何かを掴めそうな気配を見せはしたが、それだけで終わった。
アイリスの魔力はほとんど無いというぐらいに弱弱しいので、あまり長いこと続けて魔力が枯渇してもしょうがないという判断から、指輪を講義が終わった後にフォルトゥナが回収して、初日は終了となった。
講義が終わると、食堂で昼食を食べる。シロッカスも屋敷内に居たので、朝食に続き四人で昼食を摂る。
昼食を終えると、ヒヅキはフォルトゥナと連れ立ってシロッカス邸を出てガーデンの街を進んでいく。相変わらず道行く人々がフォルトゥナの美貌に目を奪われるので、衆目を集めないように途中からフード付きの外套を羽織らせて、フードを目深に被って顔が見えないようにしてもらった。
そんな一幕がありつつも、順調にヒヅキ達はギルドが在る区画まで移動していく。念の為に道中で手土産を購入してから、記憶を頼りに迷路のような路地を進み、やっとこさ目的の区画に辿り着いた。その頃には、日が大分傾いていた。




