再会23
色々と空振りに終わっている問いだが、ヒヅキとしてはそろそろ何かしらの収穫が欲しいところ。まぁ、こうして声の主と会話が出来る機会が少ないのだからそう思うだけだが。
(さて、時間もそうないらしいし、次は何を訊いたものか)
結局不可能という答えしかもらえていないので、次の質問について慎重に考えていく。
『ん、そろそろ時間になるようだな。最後に何かあるかい? そんなに時間もないが、聞くだけ聞くよ?』
(そうですか。では、この魔法について御教え願いたい)
『どれについてかな?』
(この魔法は様々なことが出来ると聞きました。それでしたら、どうやれば新たな魔法が使えるようになるのでしょうか?)
『ふむ、なるほど。そうだね、魔法を使うにも適正やら保有魔力量などと色々と条件があってね、使いたい、はいどうぞという訳にもいかないのだよ。しかし、確かに君の言う通りにその魔法は様々な可能性を秘めている。だからそうだね、結局現状君には負担を掛けているだけだし、何かしら手は打っておこう。ただし、僕もその魔法も何でもできるという訳ではない。ただ新たな力が得られるだけだし、それについては適性など調べてからだからここでは明言出来ないが、多少の無理はこちらで何とかするとしよう。ただし、それなりに時間が掛かるから気長に待っていてくれ』
(分かりました。お願いします。それで、新しい力を手に入れたとして、それはどうやれば判るのでしょうか?)
『その辺りは自力でと言いたいところだが、何かしらの合図は送ろう。まぁ、それに気づくかどうかは君次第ということだな』
(はぁ……分かりました)
声の主の言葉に、ヒヅキは半ば投げやり気味に頷く。何となくだが少し適当な感じで対応するのが正しく、まともに対応しても無駄なような気がしてきていた。
『それじゃ、そろそろ起きる時間のようだ。また機会が在れば会うこともあるだろう』
(はい。それではまたいつか)
ヒヅキがそう返すと、世界が光に包まれ目を覚ます。
「………………朝か」
周囲の状況を確かめたヒヅキは、そっと目を開けて呟いた。窓から差し込む明かりで、部屋は明るくなってきている。
そのまま目線を下に転じれば、そこにはフォルトゥナの穏やかな寝顔があった。
「………………ふむ。朝食まではまだ時間があるかな」
前にシロッカスのところで世話になった時から変わっていないのであれば、窓から射す光の加減からヒヅキはそう予想する。それであれば、まだこのままフォルトゥナを寝かせていてもいいかと思い、天井に目を向けると、先程までの夢? について考える。
(結局、新しい魔法を何か用意してもらえるだけで、他は何も進展は無かったな。もう無理だということが判っただけよかったのかもしれないが)
変な希望を抱かずに済んでよかったと、ヒヅキは少し無理矢理そう思うことにして、小さく息を吐いた。
そのまま天井を眺めたまま、今日の予定を頭に思い浮かべる。今日は午前中はフォルトゥナによるアイリスへの魔法講座を一緒に受け、午後からはギルドの方へ赴き、シラユリ達へと挨拶する予定であった。
エイン達へは明後日以降でどこかで会えに行けばいいかと考えつつ、その前に現在のガーデンの様子も直接確認しておきたいなと思い、エイン達とは更に後だなと予定を組み直す。
(殿下達と合流後は、その別の神に創られた存在が居たという遺跡から周辺を調べてみるか。それから少しの間一緒に調べたら、それで殿下達は満足してくれないだろうか? ……無理だろうな)
少しの間一緒に旅をすれば約束を守ったことにはなるだろうと考えつつも、その程度ではい終わりとはいかないのだろうなと思い、ヒヅキは気が重くなってくる。旅は身軽な方が楽なのだ。
(フォルトゥナはまぁ、スキア相手でも自衛が出来るからいいけれど……それでも誰かと旅するというのも大変だな。一番はウィンディーネをどうにかしたいところだが)
ヒヅキはそう考えたところで、その難しさに思わず顔を顰める。未だにウィンディーネを退屈させる方法が思い浮かばない以上、ウィンディーネを引き剥がすのは至難の業であった。