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再会2

 エルフの国からガーデンまでの道には間に森が2ヵ所在る。その最初の森であるカムヒの森には、竜神の泉という竜神の住まう泉があった。エルフの国へと行く前にヒヅキが左腕を失った地でもあるが、名前通りに本当に泉に竜神が住んでいる。

 黒髪に引き締まった身体をした青年であるヒヅキは、折角なのでカムヒの森を訪れたついでに竜神を訪ねようと、泉に向かっていた。

「その竜神というのは、ヒヅキ様の左腕を奪った輩なのですよね?」

 背が高く、おそろしいまでに整った顔立ちのエルフであるフォルトゥナが、ヒヅキから目的地の説明を受けて、竜神への殺意にも似た怒りの籠る言葉で問い掛ける。

「そうだが、左腕に関しては元に戻そうとしてくれたのを私が断ったのだよ。それに、あの時は竜神は自我を失いかけていたから。一番の原因は、私が弱かった事だし」

「それでも、赦されざる蛮行です! それに、ヒヅキ様が弱いなんてことはありえません!!」

 確信を持って力説するフォルトゥナに、ヒヅキは困ったような表情を浮かべるも、フォルトゥナはそれでも揺るぎない意志を瞳に宿したまま。

「ありがとう。でも、勝てなかったのは事実だよ」

「それはヒヅキ様が遠慮されたからでは?」

「全力でやったさ」

 肩を竦めるヒヅキだが、フォルトゥナの瞳の光は変わらない。それに内心で苦笑するも、気にしないようにして泉を目指す。

「そういえば、フォルトゥナも泉の中に入れるんですかね?」

「ヒヅキと一緒であれば、入れると思うわよ?」

 ヒヅキの問いに、何処からともなく女性の澄んだ声で答えが返ってくる。

「ならばいいですが」

 その声の相手、精霊とも神とも様々な呼び名をされるウィンディーネへとヒヅキはそう返すと、ちらりと半歩後ろを付いてくるフォルトゥナの方へと目を向ける。相変わらず濁りの無い瞳でヒヅキの方へと視線を送っていた。

 それからも森の中を進み、竜神の泉に到着する。そこは澄んだ水を湛える場所で、そこそこ深いはずの水底まで上から見る事が出来た。広さも十分にあり、泳ごうと思えば問題なく泳げるほど。ただ、神聖な泉な為にそんな不心得な事をする者は居ないが。

 泉の縁に立ったヒヅキは一度泉の中を覗いた後、やや後方に立つフォルトゥナの手を引いて横に立たせると、これから中に飛び込むことを告げてから、一緒に泉の中へと飛び込んだ。

 泉の中に飛び込んだヒヅキ達は水中を漂う、ということはなく、少しも濡れることなく青白い光が照らす空間に出た。

「よく来たな人間。今回はエルフも連れているようだな」

 その空間に到着すると、二人に優しげな声が掛けられる。その声の出所は探るまでもなく、正面で少し首をもたげた巨大なヘビ。

 たった今通ってきた門が照らす青白い光が頼りなく周囲を照らすだけの空間なので、そのヘビの全容までは不明だが、それでもかなりの長さのヘビなのは、見えている部分だけで容易に想像がついた。そもそも、頭の部分だけでヒヅキよりも大きいという時点で、推して知るべしというやつか。

「彼女は古い知り合いでして。今回はガーデンに向かう途中にお邪魔させて頂きました」

「そうか。何も無いところだが、ゆっくりしていくといい。それにしても……義手を付けたのだな」

「はい。エルフの国で造って頂きました」

「そうか。よい義手だな」

 ヒヅキが左腕を失った時の事を思い出したのか、竜神は申し訳なさの籠った声音で頷いた。

「はい。いい腕の職人のおかげで、まるで元から左腕がこうだったかのように快適です」

 軽く左腕を動かして見せるヒヅキを、竜神は優しい目で見守る。

 そんなヒヅキの横では、フォルトゥナが微かに不穏な色を帯びる光を瞳に宿して、竜神の姿を観察していた。そこに。

「あら、私には何か挨拶はないのかしら?」

 姿を現したウィンディーネがヒヅキの隣、フォルトゥナの反対側に姿を現して、試すような声音で竜神に声を掛けた。

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